5.危機 ページ5
何?不審者かな?
どうしよう………
考えただけで不安が募っていく。
けれど、急にその足音が止んだ。
「………?」
不思議に思った私は、歩くスピードを緩めて恐る恐る後ろを振り返る。
けれど、そこには誰もいない。
私と同じように急いでいた人が角で曲がったのかも。
ホッとしながら前を向く。
と、何かにぶつかって私は尻餅をついた。
「きゃ!」
いくら怖かったとは言え、前を見て歩いていなかった私が悪い。
「す、すみませ───っ!」
謝りながら、ぶつかった人物を目の当たりにした私は言葉を失う。
目の前の人物を人と呼ぶには異形だったからだ。
角が生えた頭、チラリと覗く牙、血色の悪い肌。
そして何より大きく鋭く尖った爪。
背中には羽のようなもが生えている。
「ケヘヘッ!旨そうな匂い!!」
不気味に笑う目の前の人ならざる者。
「……ぁ…っ………!」
恐怖のせいか、声が出ない。
買い物かごを手放していることも忘れて、私は尻餅を付いた体勢のまま後ろに後ずさる。
目の前の異形からは血の匂いが漂ってきていた。
次の瞬間、背中に痛みを覚えて、気付くと私の体は地面に倒されていた。
「ぃっ!!」
強く掴まれた肩に鋭い痛みが走る。
「おおっ!!やっぱり!稀血じゃねぇか!こいつはご馳走だ!!今日はツイてるぜぇ!!」
ご、ごごっ、ご馳走!?
もしかして私、喰われる!?
私、しぬの……?
背筋がゾッとして、震えて力の入らない体でもがく。
けれど、逃げようにも力ずくで押さえられていて、身動きすらとれなくて、びくともしない。
もうダメだ……と、ぎゅっと目を瞑って諦め掛けた時、体に掛かっていた重みがなくなった。
直後、グイッと首から体が引っ張られて上半身を強制的に起こされる。
「う゛っ!!」
今度は首が絞められるような苦しさが私を襲った。
「ずいぶん勘が鋭いんだね……」
聞こえてきたのは少し低くて、ゆっくりな話し方の声。
この声は何処かで聞いたことがある気がする。
「お前!鬼狩りだな!?一歩でも近付いてみろ!!その瞬間、こいつの命はないぞ!!」
「………足音消したつもりだったのに、……なんでバレたんだろう?」
「んなこともわかんねぇのか?テメェからは殺気がダダ漏れなんだよ!」
「殺気………そうなのかな?」
「………。」
何故だろう……
私には命の危機が迫っている筈なのに、私を置いて交わされている会話が完全に私の存在を無視していた。
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月見(プロフ) - 香恋さん» いつも読んでくださり、ありがとうございます!褒めて頂いてとても嬉しいです(*^^*)ゆっくりになりますが、更新頑張ります!! (6月26日 7時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
香恋 - 月見さんの久しぶりの鬼滅作品…!!!しかも無一郎くん( ; ; )嬉しいです!!刀鍛冶の里編ロスを埋めて下さいます泣 相変わらずキャラが喋ってる様に台詞が聞こえてきます。続きとても楽しみにしています☺️ (6月25日 23時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月見 | 作成日時:2023年6月8日 22時