無感情ブラック【刀剣乱舞】 (ページ42)

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「頭はおかしくないと思います」

「絶対おかしいから！」

　大和守様は一度ギャンと叫ぶと、ハッとしてかぶりを振りキリリと眉をつり上げた。

　ギロリと音がつきそうなほどこちらを睨み、歯を食いしばっている。

「クソッ……こんなんで僕が懐柔されると思ったら大間違いだからね。僕はアイツなんかとは違う……おまえらっていつも、その辺のとこがわかってない。アイツに通用することは僕にも通用すると思ってる……嫌なことこの上ないね」

　そう忌々しげに呟くと、大和守様は唇を歪めて「簡単な頭で羨ましいよ」と吐き捨てた。私は、大和守様の突然の変貌にパチクリと目を瞬かせ、そっと首を傾げる。

　大和守様の仰る“アイツ”とは、一体誰だろうか。長谷部様に訊けばわかるだろうか。

　否、せっかく本人が目の前にいるのだから、本人に訊いてみるのが一番だろう。そう思い至った私は、思い切って──というほど思い切ってはいないが──大和守様に尋ねてみることにした。

「……“アイツ”とは、一体誰ですか？」

　私が尋ねると、大和守様は一寸驚いたように目を見開き、何秒かの間のあと「答えるわけが無いでしょ」と嘲るように笑った。

「アイツは僕が守る」

　すとん、と表情が消える。あ、と思った束の間、大和守様は風呂場から駆け出していた。「追いますか？」と長谷部様が訊く。私は静かに首を振り、「それより、“アイツ”とは誰ですか？」と長谷部様を振り仰いだ。

「……恐らくですが、加州清光のことかと。奴らはかつて同じ主の元にいた昔馴染みで、そのよしみでよく共にいるのです。……加州は人に懐きやすく、嘘や冗談をすぐ信じる傾向にあり、警戒心の強い奴の目には、少々危なっかしく映るのでしょう」

「加州清光、ですか」

「はい。それに加州は、他と違って人一倍審神者への執着が強いんです。ふらふらと前任に近づいては、よく殴られたり蹴られたりしていました。俺が何度注意しても、あいつは一向にそれをやめなくて……いつも、ぴったりと前任の傍を離れませんでした。前任が死んだと聞かされて、一番取り乱したのも加州です。……まあ、ある意味では、刀剣としての忠誠を一等手にしていた、ということでしょうが」

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