137話 ページ41
シャロットは腕を伸ばし、アオバを抱き上げた。
「この子は一足先に僕が国に連れて行こう。アランに会いたければ、この方向に真っ直ぐ飛んでおいで。迷っても、眷属とその主人は特別な絆で結ばれている。気配を
それが2日前の話だ。
シャロットに促されて城に戻ったハルは、中庭に腰を下ろした。
吹き抜けの天井から舞い込む光。
色とりどりの花と蜜を求めて舞う蝶。
血なまぐさい戦場とはかけ離れた美しい中庭に、赤ん坊用の
「あぁう」
汚れを知らない目がひらり舞う蝶を追いかけている。
「コレット様、蝶がお好きですか?」
つぶらな瞳がハルを捉えた。
アランが眠りについた今、主人を失ってしまうかもしれない恐怖に
限られたものしか入れないここならば、異端な自分の姿で人を驚かせることがない。
4本の足を折り、揺りかごの隣を陣取ったハルは子守唄のような光に誘われて目を閉じた。
ここにたどり着いた時、アオバは丁重に扱われ、国王の1人息子、コレットの隣に寝かされていた。
アオバの方が生まれが早いらしく、中庭で飛び交う鳥に手を伸ばしている横で、コレットはマイペースに寝息を立てていた。
人型の流星は、さらりとした黒い髪に、漆黒の目。容姿は整っている方だろうが、やはりどこか人間離れした雰囲気を
「流星」
「ハル。アランは?」
静かに首を横に振ったハルの反応は想定内だった。
ここにたどり着いた時、アランは八芒星の真ん中に横たわり、魔導師たちが絶え間なく術を施していた。
「アランは俺にアオバを託して逃がした。俺は言う通りに走ることしかできなかった」
不思議な感覚だ。
眷属化してから、知識や記憶というものが日に日に蓄えられていき、感情というものが次々に湧いてくる。
「どうしてだ?どうして、俺の眷属化がヒトなんだ!何物も
「それをアラン様がお望みではないから」
ハルはキッパリと言い切った。
「アラン様が大好きな貴方に、そんな事を望むわけがない。」
ぐっと唇を噛み締め、俯いた流星を慰めるようにハルは優しく微笑んだ。
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