133話 ページ37
『レーム?ムー・アレキウスか?』
「ううん。新しく司祭になったティトスからの親書だったみたい」
『レームの司祭とアルガン島になんの関わりがある』
「さぁ。シンドバッドも不思議がってたくらいだから」
まぁ。
きっとアラン君がらみだろう。
すんなりそう考えが
『話はわかった。とにかく、章妃はバルバッドに帰還させ、紅輝はアルガン島に引き帰らせる』
あ。そっか、紅輝君はレームに留学してたことがあるもんね。
レームが出てくるのなら、紅輝君の方が話が通りやすいのかもしれない。
冷たい風が頬を横切った。
風が流れた方を見ると、今日という1日が終わろうとしている。
「紅炎。落ち着いて聞いてくれる?」
するっとその言葉が口から出てきた。
『なんだ』
「アラン君が・・・、白龍達と戦って海に落ちたって」
『何を言っている』
長いその沈黙が、何を意味するのか分からないわけない。
どれだけ紅炎がアラン君を可愛がり、将来を期待していたか。
その子を義弟が殺した。
たった5歳の子供を。
私だって信じたくない。
シンドバッドからの情報によると、金属器の力を使い、アランがシンドバッドを
シンドバッドが、そんなつまらないウソをつくはずがない。
「遺体を確認したわけじゃないけど、助からないだろうって。シンドバッドが・・・」
さすがの紅炎も絶句している。
「この話には続きがあるの。アラン君がいる」
『は?』
「この島に死んだはずのアラン君がいる・・・」
口を開きかけた紅炎は、結局口を閉ざした。
「今日1日話したし、姿を何回も見たけど、あれはアラン君そのものだった・・・」
『シンドバッドはなんと?』
「害を及ぼさない限り、様子を見るって」
『そうか』
実際、あのアランと接した自分だって、この異常さを口にするのが難しい。
「ごめん、紅炎。私、しばらくアルガン島にいる。アイラさん達を放ってバルバッドに帰れない」
『かまわん。俺の名が使えるのならば好きに使え』
紅炎に触れられないのが、もどかしい。
何一つ自由にならない身の上で、どれ程の思いを飲み込もうとしているのか。
寄り添いたい。
この不器用な皇子に。
「うん。ありがとう。」
戦が始まる前に、必ず帰るから。
「あのね、アルパに連絡を取ろうと思ってるの。」
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