132話 ページ36
筆を置いたシンドバッドは、改めてこちらを見上げた。
「白龍がこの島を襲ったって」
「ああ。」
「どうして?こんな事をしてなんの意味があるの?紅炎への嫌がらせのつもり?」
「いや。これは俺の
金属器?
「アランは金属器使い。『王の器』だ。」
「!!」
アラン君が金属器使い!?
一体いつ!?
最後に会った、マグノシュタッドではそんな様子はなかった。
その後?
「だが、あの『アラン』は
「え?」
『あのアラン』って?
「金属器使いには金属器使いがわかる。独特の気配があるからな。けど、あのアランにはそれがない。」
「それは記憶を失っているから・・・」
「アランは死んだ」
「は?」
死んだ?
「俺の目の前で、海に落下した。仮にアレが俺であったとしても手助けなしでは助からないだろう。」
シンでも助からない・・・?
は??
アラン君が、死んだ・・・?
「じゃあ、あのアラン君はなに?」
もはや自分が何を言っているのか、よくわからなかった。
ただ、かろうじて残っていた理性が、情報を得ようと質問を口にしていた。
「わからん」
シンドバッドがわからないという。
シンドバッドが…。
「アラン本人の意思なのか。他の誰かの意図が働いているのか。周囲に害を及ぼさない限り、様子を見る事にするさ」
アラン君が・・・、なに?
混乱する頭と崩れ落ちそうな体をなんとか引きずって、気が付いた時には海辺でぼんやり海を見ていた。
海の音を聞きながら、やっと気持ちの整理がついたAは、通信機を手に取った。
なんと伝えよう。
どう言えば、正確に状況が伝わって、紅炎の心労が増えないだろうか。
そんな考えは、通信機に映し出された紅炎の姿を見たら、消え去った。
泣きべそ交じりの声に、紅炎は大体の状況を察したようだった。
『そうか。白龍とジュダルが』
2人の時だけに見せてくれる、落ち込んだような表情。
今すぐそばに飛んで行って、抱きしめてあげたい。
「事が起こったのは3日前。連絡が
紅炎は黙って聞いている。
「集落地も全壊に近い。アグラさん、アバス、アギル君はまだ治療中。
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