125話 ページ29
「アランとアオバがいないの。きっと、まだ出てきたら危ないと思って隠れてるんだと思うの。探さないと。」
「アオバ?」
「この間生まれた妹。多分、アランが連れて逃げたんだと思うんだけど、どこにもいないの」
「生後間もない赤ん坊だ。どこかに隠されている可能性が高い。子供が入りめそうな場所をしらみつぶしに探せ」
「ハッ!」
これで大丈夫、と言わんばかりに微笑んだシンドバッドの手を、アンナはぐいっと引き止めた。
「待って、王様。なんで『隠れている』じゃなくて『隠されている』なの?王様、おかしい!何を隠してるの!!」
賢い子供というには気づかなくていいところに気付いてしまう。案外面倒なものだ。
自分もこうだったのかと思えば、当時の大人達に申し訳なってしまう。
「アランは・・・、死んだ」
「え」
「海に落ちて・・・。助けられなかった。すまない」
ずるっとシンドバッドを掴んでいたアンナの手が滑り落ちた。
「そんな事ないよ?アランは父ちゃんの子だもん!少しくらいなら泳げるから!」
探して!!
その一言は、目を合わせようとしないシンドバッドの表情に飲み込まれていった。
「・・・なんで?ウソ!ウソだもん!!!」
「アランは
アンナからすべての力が失せたように、ただただ佇んだ。
「どうして?どうして、こうなっちゃうの?私達が何をしたっていうの?」
飽きるほどその言葉を聞いてきた。
力なく溢れる涙を見てきた。
その度に誓った。
その言葉を誰も言わずに済む世界を!と。
ひたすら目指してきた。
けれど、結局は何一つ成せないまま・・・。
「すまない。すまない・・・」
「ぼくが、どーしたの?」
聞こえるはずのない声に、シンドバッドが勢いよく振り返った。
不思議そうな顔をして、赤ん坊を抱いた5歳児がこちらを見ていた。
「アラン!!?」
「ねぇちゃん、うるさい。アオバがないちゃうでしょー。ねー、アオバ」
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