116話 ページ20
「コイツおもしれーな!持って帰ろうぜ。だははは!!」
「ぼくは、おもちかえりできないの!」
「ぎゃははは!!」
ひぃひぃ、涙を流しながら笑い転げるジュダルを横目に、白龍の目には黒い光が宿る。
「紅炎は、俺の父を殺し兄上達を殺し、王座を奪った・・・」
助けて。父上、兄上!!
布団の中で泣きじゃくる幼い自分がアランに重なる。
紅炎が兄達に取って代わり、周囲の態度は一変した。
この城の誰にも気を許してはいけない。
姉上を守らなくては。
そして、いつの日か!!!
「わるものは、おまえだ!!!」
アランの叫び声に、白龍の
「だれも、いじわるしてないのに、かってにきて、ぼくのかぞくにヒドイことした!!」
アランの怒りが白龍の記憶を呼び覚ます。
炎に包まれた屋敷。
白雄に手を引かれながら、訳がわからないまま逃げまどうしか出来ない自分。
なんで?なんで??
このままじゃ、兄上まで、死んでしまう!
ちちうえ!こーえん!たすけて!!
「でてけーーーー!!!」
ドス。
アランの腹部に深々と刺さった
あっという間に出来上がる血だまり。
げほっ!と、血を吐き出したアランは、力なくその場に倒れこんだ。
「おいおい。そんなガキに何をイラついてんだよ。白龍」
しゃがんだジュダルは、アランの顔を覗き込んだ。
「あーあ。結構気に入ってたのに死んじまったじゃねぇか。つまんね」
興味を失ったように、ジュダルが立ち去ろうとした時。
ぴくっとアランの体が動いた。
こーえんくん。
いかなくちゃ・・・。
ぐぐっとアランの手が動いた。
「お。生きてる。」
よびにいかなくちゃ・・・。
ねぇちゃんたち、しんじゃう。
はやくいかなくちゃ・・・。
「行くぞ、ジュダル。茶番は終わりだ」
「あぁ?ヤダねぇ。せっかちなオウサマは。じゃあな。ちび」
いたい・・・。
おなかがいたいよ。
ぼくは・・・、しんじゃうの?
『力を欲するか?我が王よ』
その声が聞こえた途端、島中のルフがぴぃぴぃと美しい音を立て始めた。
風、海、大地その全てに宿るルフが、この世のものとは思えない歌を歌い始めたようだ。
「「!!」」
「これは・・・、ジンか!」
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