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83話 ページ37

「そうか。」
「ん?」
「いや、ここに座れ。」
「うん」

ここと呼ばれたのは、茶卓(ちゃたく)だ。
紅明が煌帝国式に()れてくれ、なんとなしにそれを見つめた。
あれこれと行儀作法があるらしい。

美しく整えられた庭を景色に、茶が静かに注がれていく。

「よく、男児を産んでくれた」
「お花!」

差し出されたのは美しい花がふんだんに使われた花束だ。

え?え?

「西では男が女に花を贈るものだと聞いていたのだが・・・、こうではなかったのか?」

少し不安げな紅炎が可愛らしくて、急いでそれを受け取った。
正しさなんかこの際どうでもいい。
紅炎が私に合わせて、花束を用意してくれた。
それだけで舞い上がるような気持ちになった。

私は、どんな顔をしていたのだろう。

花を受け取った私を見て、紅炎は、はにかむような笑顔を見せた。

「ここにいる間は心安らかに過ごせ。」
「ええ。貴方は兄王様の子を産んでくださった。感謝しても感謝しきれないほどです。ありがとうございました」

紅明の一言に、感動がサッと冷え込む感覚を覚えた。

「ちょ!待って!皇太子に寄越せとかいう話!?」

紅炎もそんなことを言っていた。
やだよ!と、席から逃げ出そうとした時だ。

慌てて紅明は「違います!」と首を横に振った。

「違います。そうではないのですよ。」

座ってください。と、丁寧に茶をすすめられた。

「我々は長く続く戦の中で大切な人を多く奪われてきました。」

少し考えた末、紅明はゆっくりと語り始めた。
珍しく慎重(しんちょう)に言葉を選んでいるようでもある。

「ご存知の通り、白雄殿下や白蓮殿下もそうです。ですから、血を残すというのは、我々にとって最も重要な事でした」

気を使ってくれているのだろう。
言っている事は深刻(しんこく)な内容だが、菓子を勧められたり、茶を飲みながらだと、ただの世間話に聞こえる。

「ここまで血をつないでくださった祖先に為にも、練家の血を我々の代で絶やすわけにはいきませんでした。」

ああ。と、思う。
紅輝君がいるからと、紅炎は子供について迫ったりしなかった。
けれど、ずっと練家の長子としての、重責と使命を背負っていた。


「我々男は国を守る事は出来ても、新しく命を生むことはできません。ですから、本当にありがとうございました」
「うん。・・・うん」

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設定タグ:マギ , 練紅炎   
作品ジャンル:アニメ
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アオイ(プロフ) - めっちゃ嬉しいですwいつも素敵な文章ありがとうございます(*^^*) (2018年2月19日 21時) (レス) id: 07a1761182 (このIDを非表示/違反報告)
飛燕(プロフ) - アオイさん» はい。久しぶりに登場です。宜しくお願いしますW (2018年2月18日 18時) (レス) id: 54f2f8f6b1 (このIDを非表示/違反報告)
アオイ(プロフ) - もちろん紅炎ですね笑笑 (2018年2月18日 14時) (レス) id: 07a1761182 (このIDを非表示/違反報告)
飛燕(プロフ) - アオイさん» ありがとうございす!ちなみ一番のお気に入りは誰ですか? (2018年2月17日 18時) (レス) id: 54f2f8f6b1 (このIDを非表示/違反報告)
アオイ(プロフ) - いつも更新楽しみにさせてもらってます!!これからも頑張ってください!! (2018年2月17日 17時) (レス) id: 07a1761182 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:飛燕 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2017年11月11日 22時

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