34話 その5 ページ8
波音に背を向け、通りすぎていく彼らの歳を、紅炎は少し前に越してしまった。
練 白雄。
中原を統一した大帝の第一子として誕生し、当然のように『煌』を背負っていくものだと思っていた。自分の失われた主。
白雄は紅炎の5歳上になる。幼い頃はこの差が非常に大きいと思っていたが、この歳になってしまえば、どうという事はない。
きゃっきゃとはしゃぐAはまだまだあどけなく、幼い。
心からAの成長を楽しみにしているのだろう。Aを見る二人の眼差しは優しい。
けれど、三人にはこの後、永遠の別れが訪れる。
「妃になるか」という問いにAは否と答えた。
何を思い、何故別れを選んだのか。訊いたところで「私の勝手だ」と言うのだろう。
あれはそう言う女だ。
いちいち、何を思ってそうしたかなど、他人に語る性格ではない。
まあ。「面倒くさい」「忘れた」などという事を言い出す可能性もあるが、それを言うべき時かの見極めは出来る女だ。
やがて時は経ち、紅炎が出会ったAは、白蓮から指南された体術を剣技との合わせ技とし、紅炎と互角に渡り合った。
白雄から受け継いだ知識で、いち早く自国の危機を察知し、先手を打った手腕は『覇王』と謳われる二人の王を交渉の場へと引っ張り出した。
知らず知らず、紅炎の顔にAが「悪人ズラ」と評する笑みが広がった。
所詮、争いがない平和ボケをした国の軍人。
技術はあっても、ただ情に脆い未熟者かと思っていた。
ならばシンドバッドから引き離した後、自分好みに変えていけばいい。そう思っていた。
が。
謁見の時、白瑛にだけ見せたあの情の傾き。
これで、謎は解けた。
紅明が飴を与えてもムチをチラつかせても、眉ひとつ動かさず、艶然と笑っていた女が、なぜ急に態度を崩したのか。
何故、不利になるとわかっていてもあの場で牙を剥いたのか。
「混乱」を起こしたかったのだ。
Aを救おうと、皇帝に上告を始めた白瑛を守るために。
殺意も疑念も一手に引き受け、白瑛を隠した。
どうしても、見捨てられなかったのだろう。
自分が認めることができなかった自分を慈くしみ、導いてくれた二人の忘れ形見を。
それはそうだ。
Aと紅炎は同じだ。
同じ背中を見て、同じ背中を追いかけた。
『煌』のものだ。
小さな島国など最早どうでもいい。
どんな残忍な方法も、卑怯な真似も厭わない。
Aは『失われた王達』が残していった煌帝国の女だ。
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飛燕(プロフ) - イノリさん» ありがとうございます。ただ今急ピッチでクリスマス編も書き上げていますので少々お待ちを。これからも応援お願いします! (2014年12月21日 18時) (レス) id: ff86b3b758 (このIDを非表示/違反報告)
イノリ - この小説好きです! 続き楽しみにしてるので頑張って下さい!! 応援してます! (2014年12月20日 23時) (レス) id: 3f888bdb68 (このIDを非表示/違反報告)
飛燕(プロフ) - shinox2さん» こんにちは。コメントありがとうございます!嬉しいコメントでした!寒くなりましたね!紅炎様に温めていただきたいっ!体温高そうだし。 (2014年12月17日 11時) (レス) id: ff86b3b758 (このIDを非表示/違反報告)
shinox2(プロフ) - 紅炎様だいたーん(*≧∀≦*) そんなアナタが好きです!! (2014年12月11日 9時) (レス) id: d0330381ae (このIDを非表示/違反報告)
飛燕(プロフ) - ライムさん» 返事がかなり遅っなってしまって申し訳ありません。本格的な連載スピードに戻るまでもう少し時間がかかると思いますが、温かい目で見守ってください。追伸、雪だるまの画像載せました!見てくれると嬉しいです (2014年12月3日 12時) (レス) id: da72338801 (このIDを非表示/違反報告)
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