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34話 その2 ページ5

「誰がそんなことを言ったの!!誰に言われたの!?」
「ごめんなさい。ママ。ひっく、ひっく!ごめんなさい」

めそめそ泣きながらも、Aは自分を貶めた相手の名前を決して口にはしなかった。
まるで、それがAの最後のプライドのようだった。




すっと、場面が切り替わった。
一面が海の中に変わり、Aと若い男が楽しそうに海のなかを泳いでいるのが見える。
透明度が高い海なのだろう。魚が泳いでいる姿があちらこちらに見えた。

Aは地上を駆けているのと殆ど変わらないスピードで、どんどん底に泳いでいく。
全くの素潜りだ。
周囲を見渡すこともなく、狙いを定めたように崖に近づくと、色鮮やかで大きな魚が悠々と泳いでいた。
Aが合図を送ると、男はそっと魚に近付き、一気に銛を放った。

水中のため音は聞こえてこないが、茶色いものが水中に漂う。
見事に仕留めたのだろう。
二人はじゃれあうように喜び、呼吸のために海面を目指した。

「ぷはぁ」
Aが顔を出すと、続いて男も顔を出した。
「ぶはっ」
「やったぁ!今日も私の勝ち!」
「だー!負けた!!」
どうやら、どちらが早く上がれるかを競っていたらしい。

水中の時は良くわからなかったが、一緒にいる男。

はっきりその姿が現れた時、思わず紅炎は息を飲んだ。

鍛え抜かれた身体つき。ツンツンとした短髪。左の口下にあるホクロ。
どことなく、ヤンチャな感じを残した快活な青年を紅炎が間違えるはずも無い。練 白蓮だ。

どうやら時間軸的に、白雄、白蓮がアルパ国に身を寄せている時らしい。

紅炎が周囲を見渡すと探していた人物が、いた。
涼やかな笑顔を浮かべながらも、皇子としての気品と、力強さに溢れている。

紅炎は思わず名を呼びかけて止まった。
ここはAの記憶の世界だ。紅炎がどれほど望んでも瞳に紅炎を映し、名を呼ばることはない。

「A、白蓮。お帰り。早く上がっておいで」

浜辺で帰りを待っていたらしい白雄は体を拭くためのタオルを何枚も手に持っている。
左分けの髪を右側に流し、兄弟中でもっとも凛々しいと称された眼差しも、今は穏やかにAを見つめている。

「お兄ちゃん!」
嬉しそうに駆け出したAを抱き止めると、白雄は体が冷えないように丁寧に水を拭き取ってやる。

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飛燕(プロフ) - イノリさん» ありがとうございます。ただ今急ピッチでクリスマス編も書き上げていますので少々お待ちを。これからも応援お願いします! (2014年12月21日 18時) (レス) id: ff86b3b758 (このIDを非表示/違反報告)
イノリ - この小説好きです! 続き楽しみにしてるので頑張って下さい!! 応援してます! (2014年12月20日 23時) (レス) id: 3f888bdb68 (このIDを非表示/違反報告)
飛燕(プロフ) - shinox2さん» こんにちは。コメントありがとうございます!嬉しいコメントでした!寒くなりましたね!紅炎様に温めていただきたいっ!体温高そうだし。 (2014年12月17日 11時) (レス) id: ff86b3b758 (このIDを非表示/違反報告)
shinox2(プロフ) - 紅炎様だいたーん(*≧∀≦*) そんなアナタが好きです!! (2014年12月11日 9時) (レス) id: d0330381ae (このIDを非表示/違反報告)
飛燕(プロフ) - ライムさん» 返事がかなり遅っなってしまって申し訳ありません。本格的な連載スピードに戻るまでもう少し時間がかかると思いますが、温かい目で見守ってください。追伸、雪だるまの画像載せました!見てくれると嬉しいです (2014年12月3日 12時) (レス) id: da72338801 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:飛燕 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2014年9月29日 6時

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