33話 その3 ページ3
いやっ!いやいやいや!殺される!!
ゴックンと唾を飲んだ綺衣はあらん限りの声で叫んだ。
「ど、どこかへ行った!!嘘じゃない!本当!こんなに大きい豚と獅子、それからよくわからない化け物がいて、そいつらと、ど、どこかへ行ったの!!」
「豚・・・?」
当然、シャルルカンにもマスルールにも思い当たる節はある。
練 紅炎の眷族だ。
「女がその豚達に捕まったって意味か?」
「ち、違う。しゅ、峻圭」
「峻圭?」
綺衣の視線の先には先ほどの遺体がある。あれが、『峻圭』なのだろう。
「峻圭からどばって、黒いものが出てきて、男が。紅い髪で怖い顔の一緒にいた男の人。あの女を庇って倒れて、あの女、凄く怒って、白い服を着た男の人たちが一瞬で消えちゃって」
言葉につまりつまり一生懸命に話をする綺衣は、どんどん怯えるように体を丸めた。当然のことだ。
綺衣を落ち着けるように背中を撫でてやる。
「大丈夫だ。全部吐き出しちまえ。それで、女は化け物たちとどこかに行ったのか?」
できるだけ優しい声を出したシャルルカンに、コクコク首を縦に振る。
大体の内容はわかった。
白い服を着た男とは、あの攻撃あとを見るからに、煌帝国の神官たちだろう。
峻圭という男を使ってAを襲った。それを練 紅炎が庇って倒れた。
治療のために眷族達とどこかへ移動した。この、あらましでひとまず合っているはずだ。
「先輩」
珍しくマスルールは難しそうな顔をしている。
仕方ない。事態は思っていたよりも複雑だ。
「神官たちにやられたなら、禁城へは戻らないはずだ。治療に専念できる場所に、身を隠したんだろう。」
「そっすね」
「ピスティが見つけた山小屋に行ってみるか。」
そこにいるとは限らないが、随分長い間そこに身を置いていたようだとピスティは言っていた。
ならば、静養のため慣れ親しんだ場所へ戻る事も考えられる。
「見ていたことを誰かに気付かれたか?」
綺衣はプルプル首を横に振る。恐らく一部始終を見られていたことに神官達は真実、気がついていなかっただろう。
無傷だった事がその証だ。
「いいか?利口なお前ならわかるな?お前が見たものは大変なものだ。バレたら殺されるだけじゃすまない。この事はもう忘れろ。峻圭についても知らん顔をするんだ。いいな?」
懸命に頷く綺衣にいくらかの金を手渡した。
「この簪は俺が買い取る。」
行け。と、綺衣の背中を押すと、マスルールは、睨み付けるように糸のような三日月を見上げていた
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飛燕(プロフ) - イノリさん» ありがとうございます。ただ今急ピッチでクリスマス編も書き上げていますので少々お待ちを。これからも応援お願いします! (2014年12月21日 18時) (レス) id: ff86b3b758 (このIDを非表示/違反報告)
イノリ - この小説好きです! 続き楽しみにしてるので頑張って下さい!! 応援してます! (2014年12月20日 23時) (レス) id: 3f888bdb68 (このIDを非表示/違反報告)
飛燕(プロフ) - shinox2さん» こんにちは。コメントありがとうございます!嬉しいコメントでした!寒くなりましたね!紅炎様に温めていただきたいっ!体温高そうだし。 (2014年12月17日 11時) (レス) id: ff86b3b758 (このIDを非表示/違反報告)
shinox2(プロフ) - 紅炎様だいたーん(*≧∀≦*) そんなアナタが好きです!! (2014年12月11日 9時) (レス) id: d0330381ae (このIDを非表示/違反報告)
飛燕(プロフ) - ライムさん» 返事がかなり遅っなってしまって申し訳ありません。本格的な連載スピードに戻るまでもう少し時間がかかると思いますが、温かい目で見守ってください。追伸、雪だるまの画像載せました!見てくれると嬉しいです (2014年12月3日 12時) (レス) id: da72338801 (このIDを非表示/違反報告)
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