24話 その4 ページ9
だからこそ拾ってくれた紅覇に誠心誠意仕えている。
「ありがとうございます」
「下らん」
「 ふふ。はい、いいですよ。湯船にどうぞ。」
紅炎が湯船に入るとざっぱぁっと湯が溢れ出し、A足を浸した。
温かくて気持ちいい。
「入らんのか?」
「私はいいです。後で残り湯をいただきますから」
Aは話をしやすいように、湯船のふちに腰を下ろした。
「湯加減はいかがですか?」
ぱちゃ
紅炎に優しく手を引かれ、指先だけが湯に浸る。
「どうだ?」
「気持ちいいです」
くつろいだ紅炎につられてAも甘えるように指先を動かした。
そっと、紅炎の肌に指を滑らせると、ゴツゴツしていて所々に古い傷がある。
「この分では、紅明様の秋の宴は中止ですね」
「ああ。宴は取り止めだろうが、庭は公開するはずだ。見に行ってくればいい。」
とりとめない話にも飽きずに答えてくれる。こんな時間が何よりも嬉しい。
「陛下のお顔は拝見できたのですか?」
「・・・ああ。」
「?」
僅かだが歯切れの悪い返事に首を傾げた。
なんというか、らしくない。
この時は知らなかったが、後から聞いた話によると、紅徳の体は醜く変異し、とてもでは無いが直視できるような姿ではなかったらしい。
「ロクな死に方ではあるまいな。」
「え?」
ぽつりと呟かれた紅炎を見ると、疲れたように背を湯船に預け、目をつぶっていた。
「民の為と声高々に叫んでも、殺生を繰り返していることに変わりはない。だが、いかなる手段を用いろうと、どれほど醜悪な力を身の内に取り込もうと、この国は守ってみせる」
ふと、開けた目にはいつもの力強さはまるでない。
思わず、その顔を包み込むように抱きしめた。
「初めて会った時の姿を思い出すな。小さく震えていた」
「貴方が恐ろしかったわけではありません。貴方の身分が恐ろしかったのです」
初めて会った時、一目見ただけで紅炎は自分とは違う人間だとわかった。
自分達を虐げてても、斬り殺しても許される存在。
その身分が恐ろしかったのだ。
まさか、皇子だとは思ってもみなかったけれど。
「私は、どれほど血に濡れた手であっても、自分が何をしたのか。それをご存じの方こそ王に相応しいと思います」
「女は聖人君子が良かろう?」
「己れが痛みを知らぬものに、他人の痛みはわかりません。実際、子供はそうやって経験を積み、危険なものを覚えていくわけですから。」
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白夜 - ショ、ショタだ (2014年12月7日 21時) (レス) id: c4aa6ec47d (このIDを非表示/違反報告)
飛燕(プロフ) - 白夜さん» え!登場しないから!?うん!でも、ほら!道なきの方で活躍してるから (2014年11月17日 20時) (レス) id: ff86b3b758 (このIDを非表示/違反報告)
白夜 - こーくんかわいそう・・・ (2014年11月17日 19時) (レス) id: 1769d2b610 (このIDを非表示/違反報告)
飛燕(プロフ) - 白夜さん» 更新が遅れていて大変申しわけありません。本編再開です。紅炎は一切出てきませんが今後に関わってくるお話です。 (2014年11月16日 20時) (レス) id: da72338801 (このIDを非表示/違反報告)
白夜 - ありがとうございます! 思わず叫んでしました! (2014年11月13日 16時) (レス) id: 1769d2b610 (このIDを非表示/違反報告)
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