検索窓
今日:1 hit、昨日:3 hit、合計:55,195 hit

番外編 風薫3 ページ37

「前をしっかり見ろ。たいした速さは出していないだろう。」

そんな事をいわれても、風がビュンビュン頬を切っていく。
怖いものなんてないと腹をくくってみたけれど、やはり慣れない馬の背は不安定で怖い・・・。

うぅ!落ちそう!!

「さっきまでの勢いはどうした。共に遠乗りに行くのだろう?」

はっ!!そうだ。こんな所でつまずくわけにはいかない。

「はい!」
「ははは。よし、しっかりと前を見ながら、馬に乗る感覚を覚えろ。始めはそれだけで十分だ」
「はい!」

紅炎に言われた事を一つずつ心掛けていると、次第に状況に慣れてきた。
一人で乗れと言われたら無理だろうが、こうして支えてもらっていれば、景色を眺める余裕も出てくる。

ぽかぽかと柔らかい陽射しの中、普段なら見上げる事しか出来ない木々がすぐそこにある。

「わぁ。素敵です!!見てください!紅炎様!ほら!葉っぱに触れます!」
「楽しいか?」
「はい!わぁ。私も馬に乗れるようになったら一人でもこんな風に散歩に来れるでしょうか」
「・・・・・・・。」

あれ?

「紅炎様?」
「一人で乗れるようになったら俺は用無しということか。薄情な女だ」
「そ、そんな事、言っていません!!紅炎様と一緒がいいに決まっています!」
「ほお?」

うっ。拗ねてる。

「本当です。」
「どうだかな」
「本当に本当です!」
「知らん」

うぅぅ〜。完全に拗ねてる。

その時だった。快調に足を進めていた黒曜がピタリと歩みを止めた。

「「?」」

理由は紅炎にもわからないらしい。
首筋を撫でながら「どうした?」などと話しかけている。

何か足を傷めるようなものでも踏んでしまったのかと不安になったその時だった。
チラっとこちらを見てきた黒曜と視線が合った。
じぃ〜っと胡乱な目で見つめてくるその目は、まるで「人の背中で喧嘩しないでくれない?」と言っているようだ。


あまりに、その動作が人間のようで可笑しくなってきてしまった。

「ごめんなさい。もう、喧嘩はしないから、走ってちょうだい。」
優しく鬣(たてがみ)を撫でてやると、とりあえず納得したのか視線をそらした。

ブルルン

黒曜は、首を一度振ったかと思えば、ゆっくり動き出した。

「 よく不機嫌になった理由がわかったな」
「何と無くです。わあ。綺麗。ほら。ここは開けているから遠くまで見えますよ」

番外編 風薫4→←番外編 風薫2



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (60 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
75人がお気に入り
設定タグ:マギ , 練紅炎
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

白夜 - ショ、ショタだ (2014年12月7日 21時) (レス) id: c4aa6ec47d (このIDを非表示/違反報告)
飛燕(プロフ) - 白夜さん» え!登場しないから!?うん!でも、ほら!道なきの方で活躍してるから (2014年11月17日 20時) (レス) id: ff86b3b758 (このIDを非表示/違反報告)
白夜 - こーくんかわいそう・・・ (2014年11月17日 19時) (レス) id: 1769d2b610 (このIDを非表示/違反報告)
飛燕(プロフ) - 白夜さん» 更新が遅れていて大変申しわけありません。本編再開です。紅炎は一切出てきませんが今後に関わってくるお話です。 (2014年11月16日 20時) (レス) id: da72338801 (このIDを非表示/違反報告)
白夜 - ありがとうございます! 思わず叫んでしました! (2014年11月13日 16時) (レス) id: 1769d2b610 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:飛燕 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2014年9月29日 6時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。