33話 その5 ページ32
配給というのは、一時的な救済ならばとても有効だ。
総督府への信頼も集まるだろう。
けれど、それが長く続けば依存が生まれ、自立心を損ねてしまう可能性もある。
また、それを脅しの材料としてバルバッドの国民を虐げようとする役人も現れないとは限らない。
「何故?どうして配給制なのか聞いていますか?」
「え?詳しくはわかりませんが、騒乱時期から間もありません。現状を打破する為に、とりあえず最低限の生活を保障するという事なのではありませんか?」
確かに、田舎の方ならば無事かもしれないが、騒乱の中心部であった王都では総督府の援助もなしに生活を立て直すのは難しい。
潔もAとさほど変わらない見解を示した事にほっと肩の力を抜いた。
よかった。
何か裏があったわけではないらしい。
Aはニコリと笑って頷いてみせた。
「確かにそうね。田畑が駄目だったら今年の実りはあてにはならないし。」
「そうです。急ぎの分は煌帝国から仕入れているのでしょうが、全国民分となれば、平等に。状況に合わせて。という、管理さえ大事業かもしれません」
言われてみればその通りだ。
一度戸籍を整理し、家族構成を考慮しての配給。更には働きに合わせての給金の配布。
全国民分ともなれば多少の不備も落ち着くまでは仕方がないことなのかもしれない。
「・・・バルバッドがそんな時期にここを拠点として戦争をしようというのですか?」
「逆に言えば、拠点となる土地だから整備を急いだのかもしれませんね」
なるほど。と、頷いたAは、案じるように眉をひそめた。
「それでは、国民の皆さんは大変じゃないんですか?急に煌帝国式に変えられたものもあるでしょう?」
僅かに潔は目を見開いた。
驚いた。
誰もそんな事をAに話すはずがない。
「なぜ・・・、そう思うんですか?」
少し声が震えてしまっただろうか。
潔が自分の失態に焦っていると、Aはそっと潔の手を握った。
「あの人が律儀に占領した国の習慣を習うとは思いませんし、港から見えた町並みは全て煌帝国式のものでした」
「それだけで・・・ですか?」
潔の言葉にAは悲しそうな笑顔を浮かべた。
「それに・・・。私自身、生まれは『煌』ではありませんから。戦争に負けるということがどういうことかくらいは知っています」
そうだ。
確かに聞いていた。この方は三国統一後の混乱期、煌に流れてきた難民だったと。
困惑を深めた潔は目を伏せた。
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白夜 - ショ、ショタだ (2014年12月7日 21時) (レス) id: c4aa6ec47d (このIDを非表示/違反報告)
飛燕(プロフ) - 白夜さん» え!登場しないから!?うん!でも、ほら!道なきの方で活躍してるから (2014年11月17日 20時) (レス) id: ff86b3b758 (このIDを非表示/違反報告)
白夜 - こーくんかわいそう・・・ (2014年11月17日 19時) (レス) id: 1769d2b610 (このIDを非表示/違反報告)
飛燕(プロフ) - 白夜さん» 更新が遅れていて大変申しわけありません。本編再開です。紅炎は一切出てきませんが今後に関わってくるお話です。 (2014年11月16日 20時) (レス) id: da72338801 (このIDを非表示/違反報告)
白夜 - ありがとうございます! 思わず叫んでしました! (2014年11月13日 16時) (レス) id: 1769d2b610 (このIDを非表示/違反報告)
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