33話 その3 ページ30
眉間にシワを寄せた紅炎が潔を捉えた。
何故だろう。
何度も顔を合わせてきたはずなのに、初めてその目に姿が映ったような気がする。
「迎賓館に入城する際、各国の従者の出入りが増える。出兵前の大事な時期だ。僅かな情報漏洩が命取りになる」
「はい」
紅炎には厳しい空気が漂っていた。
確かにそうだ。
マグノシュタットに標的を絞った今、他国の干渉を受けるほど迷惑なことはない。
「潔。貴方はA殿の側を決して離れず、命を懸けてお守りしなさい」
「は・・・?」
さっと変わった潔に顔色に、紅炎は口を吊り上げおかしそうに笑った。
「不満か」
まさか!そんなはずがない!!
「いえ!いいえ!!かしこまりました。確かにその任、承りました」
地べたに額を擦り付けるかのように潔は礼を取った。
「では、潔。これを。」
紅明が差し出してきたのは、小さな鏡のようなものだった。
「私のジン。そのダンジョンにあった魔法具です。そうですね。潔ならば、一度。一度だけ好きな場所に移動することが出来ます。何かあればこれを使いなさい。」
下賜されたそれは一見すれば古ぼけた骨董品のように見える。
「いいですね?一度っきりです。使いどきを誤らないように。」
※
Aの元に戻ると古琴の音色が聞こえて来た。
たどたどしかった音色も練習の甲斐があったようで滑らかな音色に変わっている。
嬉しい!嬉しい!!
忠誠を誓った主人から賜った、憧れの人物の護衛。
思わずにやけたままの顔を引き締め、魔法具が懐に入っている事を確認した潔は、室内に入った。
「潔?戻ったの??」
「はい。ただいま戻りました」
にっこり笑いながら前に出て行くと逆にAの顔は曇っていた。
「紅明様は何の御用だったの?」
いつも笑っている印象が強い主がこんな顔をするのは珍しい。
後で何があったのか侍女仲間たちに聞かなくては。
とにかくAを勇気づけるように潔は笑った。
「いいえ。大した用ではありませんでした」
「そう。そうなの」
けれど、Aの表情は晴れない。
「A様こそどうなされましたか?顔色がすぐれませんけど」
「・・・。皆、下がってお菓子でも食べていらっしゃい。潔と話があるの」
Aがそういうと、休憩の許可を得た侍女達は顔をほころばせ退室していった。
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白夜 - ショ、ショタだ (2014年12月7日 21時) (レス) id: c4aa6ec47d (このIDを非表示/違反報告)
飛燕(プロフ) - 白夜さん» え!登場しないから!?うん!でも、ほら!道なきの方で活躍してるから (2014年11月17日 20時) (レス) id: ff86b3b758 (このIDを非表示/違反報告)
白夜 - こーくんかわいそう・・・ (2014年11月17日 19時) (レス) id: 1769d2b610 (このIDを非表示/違反報告)
飛燕(プロフ) - 白夜さん» 更新が遅れていて大変申しわけありません。本編再開です。紅炎は一切出てきませんが今後に関わってくるお話です。 (2014年11月16日 20時) (レス) id: da72338801 (このIDを非表示/違反報告)
白夜 - ありがとうございます! 思わず叫んでしました! (2014年11月13日 16時) (レス) id: 1769d2b610 (このIDを非表示/違反報告)
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