検索窓
今日:8 hit、昨日:3 hit、合計:55,202 hit

31話 その2 ページ24

A本人は全く分かっていないようだが、出会った頃と比べようもないほど、肌は白く、黒髪は絹糸のように艶を帯びしっとりと背中を流れている。

顔の造作は当然変わっていないはずなのに、容易に触れることすら叶わぬ至宝のような雰囲気さえ伴っている。

内面が表に影響するというのは決して嘘ではない。
歳を重ねるごとに、気の強い者。弱気な者。陰気な者。楽観的な者。それぞれの性格が顔かたちを作り出す。
初対面での第一印象が、その後の全てを左右しまうというのは決して脅しではないのだ。

潔にAの第一印象を訊くと、「お優しげな方ですけれど、主としてはどうなんでしょうか?」だった。つまり慈悲深そうではあるが、頼りなさそうだったのだろう。

『控えめ』と『頼りない』は違う。特にこれから多くの侍女達を従えていかなくてはならないというのに、初対面で、ナメられるような事はあってはならない 。

例えば女が集まればいさかいが起きる。
そんな時に女主人としてそれを治めなくてはならないのだ。
癇癪(かんしゃく)を起こすこともなく、贔屓(ひいき)をすることなく平等に話を聞き、場を治められる度量はすぐに身につけられるものではない。

けれど、偶然にもAは既にそれを理解し、いとも当然そうにやってのけた。

『弟達や村人達の喧嘩を仲裁するのとさほど変わりませんから。これくらいは力になれます。肝心なのは感情的にならず、まずは互いの主張を聞くことです。根気よく話をすると意外と答えはポロッと出てくるものですよ。』


素質はある。
つまり、彼女に必要なのは自信だった。
出自や育ちでどうしても卑屈になりがちだった彼女に、自信を持たせることが出来れば、化ける。
紅明はそう確信した。

そうして、今。
優しげな微笑みの中に聡明さを感じさせる、見事な佳人としてAは紅炎の奥を彩っている。

「潔はどうです?お役に立てていますか?」
「はい。潔がいてくれなければもう何をするにも困るほどです。本当に良い方を遣わせてくださってありがとうございました」

Aがそう褒めていると、茶を運んできた潔が遠慮がちに声をかけてきた。
聞こえていたのだろう。少し頬が赤く染まっている姿がいじらしくて、本当に可愛らしい娘だ。

それぞれの元に茶を運ぶ姿も、勇猛果敢な将軍、有能な軍師の側を華やかに舞う蝶のようで、一幅の絵を見ているようだ。

31話 その3→←31話 その1



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (60 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
75人がお気に入り
設定タグ:マギ , 練紅炎
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

白夜 - ショ、ショタだ (2014年12月7日 21時) (レス) id: c4aa6ec47d (このIDを非表示/違反報告)
飛燕(プロフ) - 白夜さん» え!登場しないから!?うん!でも、ほら!道なきの方で活躍してるから (2014年11月17日 20時) (レス) id: ff86b3b758 (このIDを非表示/違反報告)
白夜 - こーくんかわいそう・・・ (2014年11月17日 19時) (レス) id: 1769d2b610 (このIDを非表示/違反報告)
飛燕(プロフ) - 白夜さん» 更新が遅れていて大変申しわけありません。本編再開です。紅炎は一切出てきませんが今後に関わってくるお話です。 (2014年11月16日 20時) (レス) id: da72338801 (このIDを非表示/違反報告)
白夜 - ありがとうございます! 思わず叫んでしました! (2014年11月13日 16時) (レス) id: 1769d2b610 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:飛燕 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2014年9月29日 6時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。