おとぎの国の贈り物 3 ページ7
「銀のスプーンを生まれながらに持てた子は財に恵まれた家の子なんです。」
なるほど・・・。
「だから、なんですね」
「せつない親心が作り出した言い伝えですけど、
にこっと笑顔を作った娘は、シャロットにスプーンを見せた。
「是非。この子に銀のスプーンを買ってあげてください。そういう時代になったんですから!」
「それなら頂こうか。どれにしようか…。迷うね」
シャロットはこれでもかと言うほど真剣な表情で、スプーンを見始めた。
シャロットが見ているのは、
この子のために。と、思うと、
その時、不意にひとつのスプーンを見つけた。
なんの変哲もない、普通のスプーンだ。
それを持つと不思議と重さも形もしっくり来た。
「これがいい」
「これかい?」
Aが持つスプーンにシャロットは驚いたような顔をした。
今さら遠慮をするような仲でもないので余計だろう。
「うん、これがいい」
もう一度、念を押すようにそう言うと、シャロットは
「君がそう言うのなら、これにしよう」
無事スプーンを購入した2人は「お幸せに」と見送られ、店をあとにした。
Aは、今にも雪が降りそうな
「すごいね」
「ん?なにがだい?」
「この子は大勢の人から祝福を受けて生まれてくる。今日始めて会った人からも。もうすでに、幸せな子だよね」
Aは大きくなった腹を撫でた。
言葉にしなくても、そうだね。と、シャロットの笑顔が語っている。
「さて、日が落ちきってしまう前に帰ろうか」
北の日中はとても短い。
素直にAが頷くと、シャロットは手際よく預けていた食料品をトナカイが引くソリに乗せていく。
「ここに座れるかい?」
「平気。よいしょ…」
腹に気を付けながらAが乗ると、シャロットはその後ろに立って、
「じゃあ、行くよ。ゆっくり走らせるけれど、体調が悪くなったりしたらすぐに言うんだよ」
シャロットの
ゆっくり走る分、頬に当たる風はさほど
そのお陰で周囲を見渡す余裕ができている。
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