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星を抱くもの 42 ページ50

300年以上の歴史を誇る大国からの使者に、周囲は一斉に(ひざまづ)いた。

アラン王にレームの大貴族。

こんなところで立ち話をさせるなど、首がいくらあっても足らないほどの不手際(ふてぎわ)だ。

「こんなところで何を?君のせいで、彼らが死にそうな顔をしているよ。さあ、馬車の中に入って。会場まで一緒に行こう」

確かにこの騒ぎで人が集まってきている。

「あ……、ぁあ……!」
「ん?」

ササの状況を察したようで、ムーはアランに視線を戻した。

「アラン?」
「僕が魔法を使うと、良くないことが起こるんだ」

きっと、これもその一つだ。
すがるササを見てそう思った。

西の諸国を巡っていたとき、ひとつの魔法を使うと、次もこれもと。
人々はアランが使う魔法に傾倒(けいとう)されていった。

感謝よりも、欲が深まっていく。
それをチャンスと玉響は「人間の業だ」と蔑んだ。

アランの力は『特別』じゃないといけない。

それが、アランの出した答えだった。

なにも言わず、じっとアランを見てくるムーの顔が笑っているようで、カチンときた。

「なに?」
「へぇ?」
「は?」

むっとしたアランの体をちょっと強引に沿道の方に向けたムーは、したり顔で笑った。

「けれど、ご覧?君はアラン王。未曾有(むぞう)の危機から世界を救う者だ」

芝居がかったムーの話し方に、アランは眉間にシワを寄せた。

「ほら!皆、君が起こす奇跡を見に集まっているよ」
「奇跡って……」

けれど、確かに。
集まってきている人々の顔は、アランがササを救うことを期待している。

「ムー君ってさ………。根っからレームの人だよね」
「ん?誉められてる?」
娯楽(ごらく)好きって意味だよ」


これで、シンドバッドや紅炎と並ぶ将だと言うのだから……。

はぁあ。

「確かに、僕なら君の『音』を元通りにすることが出来る」

ササが驚いたように顔をあげた。

「けど、なぜ、君を治さないといけない?」

それは、思ってもみなかった言葉だった。

だって。
だって!さっき、迎えに来ただけの使者に魔法を使っていた。
ササの怪我だって治してくれた。

どうして。
どうして、声だけダメなの?!

「君の歌声が素晴らしかったのは聞いた。けれど、耳は聞こえるのだろう?歌えないなら、楽器を奏でればいい」

それを聞いた途端、すがるようにくっついていたササが、足元の土を握り、アランにぶつけた。

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設定タグ:マギ , 練紅炎   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:飛燕 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2016年12月12日 20時

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