星を抱くもの 41 ページ49
フェニクスが舞うと、あっという間にササの傷は癒えた。
さっきまで痛くて苦しくて、死んだ方がマシだと思っていたのに、一瞬でそれが消えた。
これが。
これが、奇跡の力。
ササは目が真ん丸のまま、アランを見上げた。
「ありがとう」と笑うアランに応えるように、フェニックスは一声を上げ、光の粒となり、消えた。
きれい。
ササは声を失ってから、毎日毎日神様に『声を元通りにしてほしい』と、願った。
けれど、いくら願っても声は戻らず、文字通り泣いて暮らした。
声を失うと言うのがどれ程の苦しみか。悲しみか。絶望か。
周りの大人達は誰も理解してくれなかった。
歌いたい。
歌いたい!!
歌うことはササの命。ササの夢。ササの希望。
それが途絶えようとしたとき、奇跡的は起こった。
ハンカチを貸してくれた少年をつき飛ばしてしまったことを謝りたくて、ササはそっと教会に戻った。
そして、その名を耳にした。
音楽を
アラン王。
驚いた。
本当に小さな子供だったのだ。
ルフの音さえ聞こえるという、世界の守護者。
そして、ササは目撃した。
アラン王はただの使者に『いい夢がみられる』と、魔法をかけた。
この王なら。
この王なら助けてくれるかもしれない。
ササの苦しみをわかってくれるかもしれない。
「無事か?何故、こんな危ないことを?」
アランが差し出した手に、ササはしがみついた。
子供が大人になった。
魔法が使えないササにだってこれが、とんでもないことだとわかる。
この人なら……!!
「………て!………あ…ぁ……うぅう……ぇ!」
ササは、自分の
ここまで来れば誰にでもわかった。
教会にいた少年がアラン王だと知って、助けを求めてきたのだ。
あからさまに顔をしかめたのは、シンドバッドの使者だった。
アランは国王。
しかも、
一般人の相手をするような人物ではない。
アランの怒りを買ってでも馬車に連れ戻そうと心を決めた時だった。後ろから、もう一台の馬車がやって来たのは。
馬車に記された紋章は国際連合のもの。
それは、国賓が乗っていることを意味していた。
「アラン?こんなところで何をしている?」
馬車から気安く声をかけてきたのは、燃えるような赤い髪をしたレーム貴族。
「あれ?ムー君」
「む、ムー・アレキウス様!!」
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