星を抱くもの 37 ページ45
「アラン王はまだ幼く、魔法を使う為の肉体も育っていらっしゃらない。着用されている制服からもわかるように、王は現在、マグノシュダットの魔法学園に
だからこそ、魔法具に対して抵抗がなく、知識が明るいことなどをヤムライハは丁寧に説明していく。
彼女が持つ性質なのだろうか。
その声は、水の音のように、心地よく耳に流れ込んでくる。
「そもそも陛下は音魔法のスペシャリスト。我々が案じることなどありません」
バン!!!
「黙れ!そもそも我々、
会場がざわついた。
悲鳴に近い声も聞こえた。
それは誰もが思っていても、決して口に出来なかったことだからだ。
思わずアランはシンドバッドを見たが、微笑むだけで何も発言しようとしない。
けれど、ヤムライハは違った。
彼女は世界中の魔法使いを代表してここにいる。
決して聞き流せる言葉ではなかった。
「貴殿は何もわかっていらっしゃらない。」
強く握りしめた拳と同じくらい、固い声だった。
「また、魔法使いをしいたげ、差別し、戦へと突き進む歴史を繰り返すつもりですか。」
「ヤムライハ」
静まり返った会場に、シンドバッドの声だけが響いた。
堪らなくて走ったアランは、ヤムライハの手を強く握りしめると、泣き出しそうな顔がふわっと
けれど魔法が使えると言うだけで、信用されず、わかり合おうともされない場面に直面したヤムライハの気持ちを考えると、悲しくて悲しくてアランの心を締め付けた。
「あのね、わかってほしいんだ」
アランは考えた。
どうしたらわかってもらえるのか。
「ボクはおてんきがわかる。でもね、わかるだけなんだ。」
これまでわかり合えなければ、要らぬ
その為の力も、仲間もアランにはあったから。
「それをかえたり、たすけるチカラはちがうヒトがもっているんだよ。」
だって、アランには病気は治せないし、壊れた家を直すこともできない。
「みんな、『とくい』が、ちがうだけなんだ。」
会議は休憩時間に入った。
慣れない場に疲れたアランは「ぼく、おさんぽにいってくる」と、断りをいれて、パルテビアの街を1人で歩いていた。
マグノシュダットの制服を脱ぎ、ラフな格好になったアランは、物珍しい景色を見回していた。
33人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ