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おとぎの国の贈り物 1 ページ5

サクッサクッと、雪を踏みしめる音を聞きながら、シャロットはラップ国の市場に来ていた。

「大丈夫かい?僕の手につかまって」
「うん」

驚くほど腹が大きくなったAは雪での転倒(てんとう)を恐れ、外出を(ひか)えていた。
けれど、腹の子に良くないと、シャロットはこの日Aを連れて市場にやってきたのだ。

極寒(ごっかん)の土地では、アザラシの皮で作ったブーツを()き、狼や狐の毛皮で作られた帽子をかぶる。
防寒具ですっぽり顔まで(おお)うのが一般的で、これならばA肌色も目立たないだろうという判断だ。

動きにくそうに。
けれど、一歩一歩を確認しながら歩くAを見るのは微笑ましい。

「おや。妊婦さんかい。こんな日に出てくるなんて大丈夫かい?」

恰幅(かっぷく)のいいご婦人が、(はかり)を手に話しかけてきた。

「えっと、はい」
「まあ、この国の半分はこうだからねぇ。多少の無理もしないと家から出られなくなっちまうか」

ケラケラ笑う夫人は底抜けに明るい。

「何か買おうか。どれにする?」
「え・・・と」

店頭に並んでいるのは穀物(こくもつ)やイモ類がほとんどだ。
ここ数日で取れたものではなく、冬が来る前に収穫した野菜達だろう。

「小麦が欲しいな」
「あいよ。引いたものでいいかい?」
「はい」
「帰りに取りに来るので預かってもらっていいですか?」

当然のように是の返事をもらい、2人は本日のメインイベント店にたどり着いた。
ベビーグッズ店である。

「わぁ。ちっちゃい!」
「本当だ。可愛いものだね」

見るものすべてが興味深いらしく、これは何歳児サイズ?とか、これは何に使うのかなぁ?とか、久しぶりにはしゃぐ姿を見てシャロットも胸を()で下ろした。

生まれ月が近くなるにつれ、Aから笑顔が少なくなった。
頼れるものは少なく、子供の将来を思えば不安ばかりが(つの)っていたのだろう。

「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」

そばかすがチャミングな娘だった。
Aの腹を見て、「もうすぐなんですね!おめでとうございます!」と、屈託(くったく)のない笑顔を見せた。
彼女からあれこれと話しかけられるたび、少しずつAの顔がほころんでいくのがわかる。

「それに、ハンサムな旦那様で(うらや)ましいです!」
「え?あ・・・、はは。まぁ・・・」

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設定タグ:マギ , 練紅炎   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:飛燕 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2016年12月12日 20時

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