星を抱くもの 27 ページ35
流星がそういうのも無理はない。
畑の半分、野菜が枯れてしまっている。
なんとか残っている半分は、蓄えていた雨水を
思わず、ハルは空を見上げた。
暑すぎるわけではない。
ただ、晴れ渡った良い天気だ。
だが、雨が降らない。
「いかがしましょう、アラン様」
「うんとねぇ…」
西にアンテナを張っていたアランに、助けを求める声が届いたのは、3日前のことだ。
国の西側では雨が降るのに、東側では降らず、このままでは子供たちが、ひと冬、
今のご時世、人身売買は禁じられていると言うのに、人々のなかで根付くものはそう簡単に変えられない。
アランはキョロキョロ周囲を見回し、確信を得たように西の空を指差した。
「にしにあまぐもがいるから、それをよぶ!」
流星とハルに異論はない。
アランがそう言うのなら、そうなのだ。
アランは空に両手を掲げ、叫ぶ。
『パイモン!!』
アランから黄金の光が飛び出し、空を貫いた、その直後のことだった。
「な、なんだ?!急に空が!」
「物凄い早さで雲が動いてる!」
畑仕事をしていた農夫達の指が、次々に空を指す。
この奇異な出来事に、周囲を伺っていた誰かが、見知らぬ連中がいると言い出した。
しかもその中には明らかには人間とは思えない、生き物。
上半身が人間の女で下半身が獣という、架空の生き物がいるではないか。
「アンタ達の仕業か?!何者だ?魔道師か?」
この国の人々は魔法を恐れない。
要は前例が有益であったか、そうでなかったかによって、人々の印象は全く違うのだと、アラン達は気付いていた。
アランを背に隠すように、流星が一歩前に出た。
いかにも、人を
「雨雲を呼んだ。すぐにやって来るだろう」
人々はざわついたが、雨雲という響きに、まさか戸惑いながらも歓声が上がった。
手を取り合い、泣きながら跳び跳ねるように喜ぶもの。
立っていられず、地面にへたりこみ、流星に向かって拝むものまでいる。
「アランくん?アランくんだ!!」
大人たちの騒ぎを聞いて集まってきた、子供達がわぁああっと走ってきた。
「アランくん、本当にきてくれたの?」
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