87話 ページ38
「とうちゃんが、いってたもん。ほんとーだよ。『ねぇちゃんは、およめにいけるとしになったんだ』っていってた」
あぁ。そういう意味か。
知らず知らず、前のめりになっていた体を紅輝は元に戻した。
心臓が妙な音を立て続けている。
無視しようもない。
明らかな動揺だ。
「ねぇちゃん、どこか、いっちゃうの？」
「すぐじゃないよ」
すぐじゃなくても、アンナは嫁ぐのだろう。
そんな事はわかっていた。
一体誰のところに。
自分の知っている男だろうか。
「なんでみんな、どこかいっちゃうの？」
「アラン？」
「みんな、ぼくのこと、きらいなの？」
言葉にするたび、アランの目にキラキラした涙が膨れ上がる。
「そうじゃないよ。」
「うそだ」
小さな小さな声だったが、明らかにいつもと様子が違う。
「アラン？違う、違うよ。そんなわけない。皆んな、アランの事大好きだよ」
「じゃぁ、なんでみんなどっかにいっちゃうの？」
「それは・・・」
「こーえんくんもAちゃんもウソつきだ！みんな、だいッキライ！！わぁああああああん！！ぁああああああん！！！」
感情が爆発した悲痛な叫び。
世の親は「わがまま言わないの！」と
けれど、これは違う。
きっと、アランの一生を左右してしまうほどの爆発だ。
何が正解なのか、兄弟さえいない。大人の世界で育った紅輝にはせいかいがわからない。
おろおろ伸ばした紅輝の手さえ、「いやぁあ！」と、簡単に振り払われてしまう。
一体、どうしたら・・・。
ん？
紅輝の目の前を雪のような光が、頼りなく舞い降りた。
なんだ？綿毛？？
特に警戒するものには見えなかったが、どこからやってきたのか。
とっさに空を見上げたが、これといって変わった様子はない。
ふわふわふわふわ。
「ひっく。しゃろっと・・・？」
差し出した手の中に光は吸い込まれ、一粒の涙とともに、アランの目に光が戻っていくのを紅輝はただただ見ていた。
さっきの光は一体・・・。
「アラ・・・」
「紅輝様！こちらにいらっしゃいますか！？」
荒々しい馬の足音と、従者のものと思われる大声に、紅輝はアランを背に
一方で、息を切らせた従者は、紅輝の姿を確認した途端、身なりなど気にせず、馬から飛び降り、膝をつく。
「どうした？」
「至急の通達です！ただちに、本国にお戻りください！！」
「本国？」
「紅徳帝が・・・！」
「陛下がどうなされた？どうしたというのだ！！」
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飛燕(プロフ) - S夢さん» コメントありがとうございます。第2章がスタートしています！そちらもお楽しみください。 (2017年8月11日 6時) (
レス) id: 54f2f8f6b1 (このIDを非表示/違反報告)
S夢 - 主人公の心情がとても切なくて…！紅炎さん会いに行ってと思っても会ったら会ったで崩れそうで…。もう最高です！ひっっさしぶりにこんなに心に入ってくる話を読みました！更新頑張ってください！！ (2017年8月10日 21時) (レス) id: 7a4424b033 (このIDを非表示/違反報告)
飛燕(プロフ) - 薙刀桜餅さん» コメントありがとうございます！その二人は第２章あたりからじわじわ再登場予定です(笑)これからも宜しくお願いします (2017年8月7日 20時) (レス) id: 54f2f8f6b1 (このIDを非表示/違反報告)
薙刀桜餅(プロフ) - 初めまして！このシリーズがものすごく好きです！自分的には、紅覇様とティラちゃんのカップルが好きです、これからも更新がんばってください！ (2017年8月7日 19時) (レス) id: 2c35b59c63 (このIDを非表示/違反報告)
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