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183話 ページ42

「まぁ、いい。噴火が起これば確かにパルテビアにも被害が及ぶ。至急、国と連携(れんけい)を取り避難場所を探してくれ」
「承知しました」

ドアが閉まったのを横目に、シンドバッドは再び同じ問いを白瑛ではなく、彼女を操るアルバにした。

「どう思う」
「確かに奇妙(きみょう)と言えば奇妙ですが、貴方様がお気になる程の事ではないかと。」

真っ赤に引かれた紅が弧を描いた。
確かにそうなのだが、妙な引っ掛かりを覚えた。



300年近くの栄華(えいが)を誇るレーム。
華の都とはよく言ったものだ。
街行く人々は、そこにいるだけで洗練(せんれん)された印象を旅人に与える。
高台にそびえ立つ神殿に住まう神官は、国どころか世界を見渡せるという。

誰もがこの平和な世界を謳歌(おうか)しているように思えるその街角。
この世界から忘れ去られたように襤褸(ぼろ)を着て、労働に身を費やす人々がいる。

光と闇。

それが混在する国。

日差しを避けるように深くマントを被ったシンドバッドは久しぶりに訪れた街を感慨(かんがい)深く見回した。
この国で起こったことは、シンドバッドの人生そのものに大きく影響を与えた。

「おい。聞いたか?ヴェスヴィオ火山の話!」
「ああ、噴火の予兆があるって神官様がご神託(しんたく)を受けたそうだ」

神託・・・?
最近流行り出した『カフェ』というスタイルの店に入ると、少し耳を澄ませただけで、その話題はあちらこちらから聞こえてくる。

『相変わらず、面白い事を言う。神の助言だと言うのなら、私こそが神だというのに』

重々しく(わずら)わしい声。
声の主は、人間をせせら笑い、見下した。

消そうと思っても消えないダビデの『声』に今更シンドバッドは動じなかった。


「周辺の住人は順繰(じゅんぐ)りに避難を始めているって話じゃないか」
「可哀想にねぇ。命が助かっても帰る家もなければ家畜もいないんじゃ、その後どうやって生きていけと言うのかねぇ」

テーブルに運ばれてきた茶菓子は、輝かんばかりの美しさだった。
なるほど。
女子が好みそうな店だ。

早速フォークを手にし、菓子を一口大に切り分け、ふとその手が止まった。

この美しい菓子を土産に持ち帰ったところで、飛び上がらんばかりに喜ぶ者は側にいない。

シンドバッドが新たな道を踏み出したように、八人将と呼ばれたかつての戦友達も転機を迎えている。

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飛燕(プロフ) - 令和元年おめでとうございます。 (2019年5月1日 6時) (レス) id: 0f92dbd5b0 (このIDを非表示/違反報告)
飛燕(プロフ) - あいにゃんさん» コメントありがとうございます!励みになります。未だ完結しそうにありませんが、頑張りますのでお付き合いお願いします! (2019年4月26日 12時) (レス) id: 0f92dbd5b0 (このIDを非表示/違反報告)
あいにゃん(プロフ) - 小休止が入れている→入れられている の間違いです、連コメ申し訳ありません! (2019年4月25日 20時) (レス) id: a7dec96b64 (このIDを非表示/違反報告)
あいにゃん(プロフ) - 物語の起伏の表現がとてもお上手だと思いました。物語を盛り上げるだけではなく、きちんとその合間に小休止が入れているという点が好きです。まだマギの夢小説を書いていらっしゃる方がいて嬉しいです!応援しています☆ (2019年4月25日 20時) (レス) id: a7dec96b64 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:飛燕 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2019年4月25日 6時

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