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180話 ページ39

「まずは長く城を空けたことを()びる」

静まり返った空間が圧となって若い夫婦を襲う。
震えそうになるアンナの手には、アランと繋がるあの手鏡があった。

「話は聞き(およ)んでおります。山岳地帯で奇病が流行っているとか。」

両手を頭上で組み、進言する官吏の言葉に頷いた。

「そうだ。そこで提案がある。問題の地域に住む民達に新たな住居を提供し移住させようと思う」


城に戻ろう。
そう決めた日、白龍はアンナに選択を(せま)った。

「城に戻れば今までと変わらない。親兄弟にも会えず、行動は制限される。常に人の目、人の評価を気にしなくてはならないし、アンナの存在が大きくなれば命さえ(ねら)われることもあるだろう。」

それでも、共に生きてくれるか。
つまりはそういう意味だ。

宮中のことなど何も知らず、人質同然で嫁入りを強要されたあの頃とは違う。

「いやだ。島に帰りたい。」と、泣いてみれば白龍はいやいやでも島に戻してくれるのだろうか。

「何人いればいいの?」
「何がだ?」
「子供よ。沢山いなきゃいけないから奥さんをたくさん持つんでしょ?何人いればいいの?」
「いや・・・。決まりはないが」

質問の意味がわからず、白龍は(まゆ)を寄せた。

「6人でいい?」
「何故6?」
「私が6人兄弟なの。だから、6人くらいなら私も産めると思う」

だから、出来るだけ愛人やら(めかけ)を持たないでほしい。
そう言いたかっただけだ。

なのに、白龍はあからさまに顔色を変えた。

「簡単に言うな!!お産は命がけだ。なんならアンナは産まなくてもいい!」
「はぁあ?」

今更、何を言っているのか。
子供を作る。それが妃に課せられた義務。

後宮で嫌という程言い聞かせられた言葉だ。

反論しかた時だ。
無理やり抱きしめられ、訳がわからない。


「アンナを失うくらいなら子供などいらない。」


それは、どんな愛の告白よりもアンナの中に染み渡った。


白龍の側でもう少し頑張ってみよう。
そう思わせるには十分だった。


凛々(りり)しく奇病への対策を提案した白龍に返ってきたのは、物分かりの悪い幼い子供を(さと)すような、そんな嘲笑(ちょうしょう)だった。

「恐れながら・・・、陛下。何か思い違いをなさっておられるのではありませんかな」
「なんだと?」

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飛燕(プロフ) - 令和元年おめでとうございます。 (2019年5月1日 6時) (レス) id: 0f92dbd5b0 (このIDを非表示/違反報告)
飛燕(プロフ) - あいにゃんさん» コメントありがとうございます!励みになります。未だ完結しそうにありませんが、頑張りますのでお付き合いお願いします! (2019年4月26日 12時) (レス) id: 0f92dbd5b0 (このIDを非表示/違反報告)
あいにゃん(プロフ) - 小休止が入れている→入れられている の間違いです、連コメ申し訳ありません! (2019年4月25日 20時) (レス) id: a7dec96b64 (このIDを非表示/違反報告)
あいにゃん(プロフ) - 物語の起伏の表現がとてもお上手だと思いました。物語を盛り上げるだけではなく、きちんとその合間に小休止が入れているという点が好きです。まだマギの夢小説を書いていらっしゃる方がいて嬉しいです!応援しています☆ (2019年4月25日 20時) (レス) id: a7dec96b64 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:飛燕 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2019年4月25日 6時

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