アランサイドストーリー 2 ページ21
悲しみ、
ふんだんな音色に変わった水音は、飛び跳ねる音楽のように歌い始め、キラキラ世界が輝きだした。
『かあちゃん、どーしたの?』
自分と同じくらいの子供の声だった。
「え!?だれ?」
どこを見ても人なんていない。
まさか・・・
思わず寂れた祠を覗き込む。
『ぼくをよばなかった?』
「よ、よんだ!おねがい!かあちゃんをたすけて!!おねがい!おねがいします!!」
『うん、いーよー』
次に聞こえてきたのは、ざーーーーっと
「かみさま?ねぇ!かみさま!!」
もう何も聞こえない。
けれど、確かに聞いた。
翔葉が飛び込んだのはなんとか雨をしのげるだけの、ボロ屋だった。
「かあちゃん、かあちゃん!」
「どうしたの?」
青白い顔をした母、
慌てた様子の息子に
「かみさまが、かみさまが!」
「神様?」
意外な事を言われた。
「かあちゃんをたすけてっておねがいしたら『いーよ』って!」
誰が聞いても笑い飛ばすような話だ。そんな気軽な神がいるものか。
けれど、翔葉の真剣な目に花菜は微笑んだ。
「そう。じゃあ、おかあさんもお祈りしなくちゃね」
半月後。
翔葉は待った。
神様が助けてくれる。
それだけを心の支えに、自分と母を
けれど、変わったことといえば、食べ物に困ると誰かが小屋の前にそっと差し入れをしてくれることくらいだった。
春菜の病は改善するどころか、悪化していく一方だ。
「どうして?いいよって言ったのに、どうして助けにきてくれないんだよ!ウソつき!たすけてよ!!かあちゃんがしんじゃうんだ!うぅう・・・」
祠の前に崩れ落ちた翔葉は後悔した。
神様なんかいないんだ。
あんなの、ウソだったんだ。
『貧乏人は働けなくなったら死ぬしかねぇんだ!!』
母親を捨てた父の声が頭に響く。
大人になりたい。
そしたら、背負ってでも山を降りて、医者を探すのに。
そのための金ならいくらでも稼ぐのに。
無力な自分の手足見るたび、歯を食いしばった。
かあちゃんを助けてくれないなら、いますぐ、俺を大人にしてよ!
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飛燕(プロフ) - 令和元年おめでとうございます。 (2019年5月1日 6時) (レス) id: 0f92dbd5b0 (このIDを非表示/違反報告)
飛燕(プロフ) - あいにゃんさん» コメントありがとうございます!励みになります。未だ完結しそうにありませんが、頑張りますのでお付き合いお願いします! (2019年4月26日 12時) (レス) id: 0f92dbd5b0 (このIDを非表示/違反報告)
あいにゃん(プロフ) - 小休止が入れている→入れられている の間違いです、連コメ申し訳ありません! (2019年4月25日 20時) (レス) id: a7dec96b64 (このIDを非表示/違反報告)
あいにゃん(プロフ) - 物語の起伏の表現がとてもお上手だと思いました。物語を盛り上げるだけではなく、きちんとその合間に小休止が入れているという点が好きです。まだマギの夢小説を書いていらっしゃる方がいて嬉しいです!応援しています☆ (2019年4月25日 20時) (レス) id: a7dec96b64 (このIDを非表示/違反報告)
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