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168話 ページ18

もう1人は30代と思われる女性だったが、家族だと名乗り出るものはいなかった。

3人の患者と2人の家族を馬車に乗せ、先に戻るように流星に言った白龍は、改めて菅と向き合った。

「中の遺体(いたい)(とむら)って下さいませんか」

彼女達はこの土地で生まれ生きてきた。
この地で眠らせてやりたい。という白龍の願いだった。

丁寧に頭を下げた相手を、菅は胡乱(うろん)な目で見下した。

「我々の先祖は戦から逃れこの地にやって来た。」
「聞き及んでいます」
「この国が統一される前は、終わりが見えない戦が繰り返されておった 」

それはアンナも紅明から聞いていた。
具体的な事は避けていたが、2度と起こしてはいけないと。

「何もない場所じゃった。木を切り倒し、畑を作り、息をひそめるように生きてきたというのに、今度は女子供が次々に死んでいく。これは国にかけられた呪いなのだ!」

違うわ!!
(のど)からでかかった言葉は白龍の「黙っていろ」という視線で飲み込んだ。

「我々に出来るのは、自分達に災いが及ばないようにするだけじゃ。」

だから?
ごみを捨てるみたいに、病気になった人をあんなところに放りこんでいたって?

もはや、悔しいのか悲しいのかわからない感情が胸を行き来する。

あそこに押し込められた人達は、どんな思いだっただろう。

絶望だろうか。
憎しみだろうか。

死にしか救いを求められない状況だったはずだ。

「毎日毎日、目に見えぬ者に怯えて暮らす我々の気持ちがわかるか。次は母かも知れない。妻かも娘かもしれない。戦の次は病だ!我々が何をしたと言うのだ!!」

白龍の問いに答えず、癇癪(かんしゃく)を起こしたように喋り続ける菅は、心がすり減り限界を迎えているように感じた。

「この病は治ります。いえ、国の威信(いしん)にかけて治してみせます。本当に申し訳ありませんでした」

深々と頭を下げた白龍を見て、大きく項垂(うなだ)れるもの、泣き出すものもいた。

この人達も被害者なんだ。

『たすけて、かみさま!』

アランに助けを求めた少年は、役人でも医者でもなく、神に祈った。

「これが私たちの現実なのね。」

アンナの呟きに、白龍は歯を食いしばった。



それから毎日毎日、アンナと白龍は集落の往復を続けた。
どこも似たり寄ったりだったが、この日訪れた村は比較的安定して見える。

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飛燕(プロフ) - 令和元年おめでとうございます。 (2019年5月1日 6時) (レス) id: 0f92dbd5b0 (このIDを非表示/違反報告)
飛燕(プロフ) - あいにゃんさん» コメントありがとうございます!励みになります。未だ完結しそうにありませんが、頑張りますのでお付き合いお願いします! (2019年4月26日 12時) (レス) id: 0f92dbd5b0 (このIDを非表示/違反報告)
あいにゃん(プロフ) - 小休止が入れている→入れられている の間違いです、連コメ申し訳ありません! (2019年4月25日 20時) (レス) id: a7dec96b64 (このIDを非表示/違反報告)
あいにゃん(プロフ) - 物語の起伏の表現がとてもお上手だと思いました。物語を盛り上げるだけではなく、きちんとその合間に小休止が入れているという点が好きです。まだマギの夢小説を書いていらっしゃる方がいて嬉しいです!応援しています☆ (2019年4月25日 20時) (レス) id: a7dec96b64 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:飛燕 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2019年4月25日 6時

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