鯨波の声 9

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43話ページ43

『♩お目めの青い女の子空に歌うよ流れ星
きらきら光る流れ星願いを叶えて流れ星♩』

え！？

一瞬、聞き間違いかと思ったが、そんなわけがない。
低い男性の声で歌われる『流星の島』

まさか。
なんで？！
いったい誰が・・・！

『♩君と僕が手をつなぎ一緒に歩く青い海』

待って！
待って！！この歌は、アラン君の・・・！！

『君を想う青い空』

いた！！

「待って！！」

相手の都合など構わず、Aはその男の腕を引いた。

「あなた・・・、昼間の」

確か、モランと名乗った。
どうして・・・、なんで、この人が

「なんだ」

Aの動揺など構わず、紅炎は冷静だ。

「え？・・・あ、あの今の歌。どうして？」
「別に不思議なことはないだろう。俺はアルガン島を知っている」
「そ、それはそうかもしれないけど・・・」

酔いなんかもう覚めた。
目の前に答えがあるのに、掴む術が見つからない。そんな感じだ。

「でも・・・、どうしてその歌なの？その歌は・・・」

貴方は誰？

「んん？そこにいるのはAか？こんな時間になぁにやってんだ。お前は！」

突然現れた、第三者にがしっと後ろから体を引っ張られ、あっさり引き離された。

青い髪に、人間離れした巨体。

「わっ！ちょっ、やめて、ヒナホホ！今大事な話してるんだってば！！」
「ぁあ？ガキが一丁前に夜遊びか？酒くせーぞ」
「ちがーう！ちょ！放してよ！！」

ジタバタ暴れても明らかな体格差があるヒナホホとでは親子のようだ。

職務中だったのだろう。
停泊中(ていはくちゅう)の船舶(せんぱく)に異常はないか見回っている最中に発見されたのはわかるが、今回ばかりはお邪魔虫でしかない。

そうこうしているうちに、さっさと踵(きびす)を返した紅炎が闇の中に消えていく。

「あ！ちょ！！待って！まだ話が！」

いくら手を伸ばしても、紅炎は足を止めない。
遂には、姿が見えなくなってしまって、仕方なく手を下ろした。

「・・・もう！わざとでしょ！！」

「言っとくが、アレはタダもんじゃねぇ。上手く隠しているつもりだろうが、凶暴な牙を隠し持ってる。興味本位で近付いていい男じゃねぇ」

「わかってる。・・・わかってるけど。歌を歌ってたの」
「歌ぁ？男だって歌くらい歌うぞ」
「もー！！煩い！」
「ウルセェとはなんだ！ガキのくせに！」

ぎゃあぎゃあ騒ぎながら、結局その晩は自宅までヒナホホに送り届けられたのだった。