鯨波の声 9

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38話ページ38

玉艶が白龍に殺されてから、紅炎を頼り、バルバッドに集った将軍達である。
誰も彼もが1度は言葉を交わしたことがあるが、顔面の迫力とは違い、気のいいメンバーである。

「なんで泣いてんの。他の将軍達は皆んな元気？眷属達は紅輝君側についたって聞いたけど。」
「紅炎様をお守りするどころか、我々が守られる始末・・・！申し訳ありません！！」

ガバッと勢いよく将軍達は頭を下げた。

人の話聞く気はゼロである。

うーん・・・。
困った。さっさと退散出来なそうな雰囲気だ。

しょうがないか。

「それはちょっと違うかなぁ」

ひざまずいた面々と視線を合わせるために、Aもぺたんと床に座った。

「紅炎は守りたいものを守って死んだんだよ。だから、お疲れ～！またどこかで会おうね！って笑ってあげてよ。お墓はないから、まぁ、そうだなぁ～。お酒飲むとき、紅炎の分も用意してあげたら喜ぶよ。あれで皆んなの事、頼りにしてたからさ」

ね！と、笑ってみせると、潤(うる)んだ瞳のまま、将軍達は思い思いの返事を返してきた。

彼らと紅炎の絆は、自分が思っている以上のものなのかもしれない。
紅炎の盾になって死ぬ覚悟は出来ていても、紅炎に守られて生き残る事は想像できなかったのだろう。

「お前達！！罪人の話を陛下のお耳に入れるとは何事じゃ！！」
「左様(さよう)！練紅炎は煌帝国の汚点！！その名を聞くだけでもおぞましい！！」
「紅輝とて、陛下の温情で生き延びれているというのに、バルバッドの領主のような顔をしているとか！さっさと成敗せねばなるい！
・・・が、眷属達を丸め込み、周囲を守らせる
とは忌々(いまいま)しい！」

「さて。かーえろっと」
南弦と西劉の叱咤(しった)を無視して立ち上がると、「人の話を聞かんか！！」と詰め寄ってきた。

「っていうかさぁ、私に嫌味言ってる場合？七海連合加盟国としては下っ端(したっぱ)なんだからちゃんと挨拶して媚(こび)を売っておいたほうがいいんじゃない？」

「なんじゃと？！」

「バルバッドはすでに各国に使者を送って挨拶を済ませているよ。貿易国を増やしたいんだって。あの容姿に物腰(ものごし)の柔らかさ。レームに留学してた事もあるし、アルテミュラの女子が熱い視線を向けてるってさ」

ちなみに。「きゃぁあああ！カッコイイ！」ではなく、「あの男そっくりの子供が産みたい！」的なご興味だったけど。

逃げて。紅輝君。種馬にされちゃう。