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49話 ページ49

「本当の事ですよ。シャロット様のお力添えがなければ、アラン様は海にのまれ、治療の余地もなくお亡くなりになられていたでしょう」
「ぼく、しなないもん!!」
「さあ、つべこべ言わずに国に帰るんだ。2度と母親に会えなくなってもいいのかい?」
「いやだーーーー!!!わっ!はーなーせー!!ひとさらいー!とぉちゃん、たすけて〜!!」

(わき)に抱き上げられてしまえば、アランがいくら抵抗してもどうにもならない。

(さら)いねぇ。
どこでそんな単語を覚えたのか。

やれやれ。と、思いながら移動すると、本のページをめくったように、目の前には見慣れたアルパ城の中庭。
ぺっとアランを放り投げて、シャロットはバルバッドの元いた場所に戻った。

秒数にして、どれほどか。
シャロットとアラン以外には、アランだけが消えたように見えただろう。

「アランを(かくま)ってくれてたのはアンタだったのか」
「偶然ですよ。拾った以上、捨てるわけにはいかないでしょう?」

特にアグラがシャロットに恩を感じる必要はない。
見返りはきちんと流星とハルから支払われている。

「君が『蛇』かい?」
「・・・そうだ。李 青秀、アシュタロスの眷族だ」
「君を歓迎しよう」

特に変わらないシャロットの表情。
アランが気を許していたからといって、本当に信じていいのかなどわからない。
今日の味方は明日の敵。
今日の常識は明日の非常識。
そういう世界を生きてきた。

そんな青秀の警戒心に知らん顔をして、シャロットは、(ふところ)からもう一通の封筒を取り出した。

「奥方、いくつか頼まれてくれないかい。練 紅炎救出に必要なものを用意してほしい。モチロン、内密で」

中身に書かれている内容を見て、章妃は首をかしげた。

「こんなもの、何に使われるんですか?」
「それを言ったら面白くない。ただ・・・悪巧(わるだく)みは念密にするものだ、とだけ言っておこうか」

本当に何に使うのかサッパリだが、特に難しくない内容だ。章妃は「わかりました」と頷き、封筒を大切にしまった。

「さて。君達は何を迷ってるんだい?練 紅炎という最大の防壁を失った練 白龍はシンドバッドに食い殺されるだけだ。これから皇帝になろうというのに、そんな事もわからないおバカさんに付いて何があるんだい」

馬鹿にするように笑うシャロットに特に怒りもなかった。
そんな事は分かっている。
だから、紅炎はあの時・・・。

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作者名:飛燕 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2018年7月29日 10時

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