私はラメントーソ (ページ41)

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『…矢花ごめん…電話。もらってたのに気付かなかった』

『いやいや、気にしないで下さい。でも心配してたんで連絡もらえてよかったですよ』

矢花に言ったほうがいいかな…

言うっていったってどこまで？嶺亜と私が実は兄妹でしたー！ってとこまで言うの？
母親が死んだなんて言っても困惑させるだけかな、、

『…大丈夫すか？何か出来ることがあったらやりましょうか？』

なんか…ものすごく、、安心する
周りの環境がどんどん変わる中で高校からずっとそのままでいてくれる矢花。その存在がどれだけ今まで私を助けていたのだろうか

『…お母さん、死んじゃったから…今、告別式なの』

少しの沈黙が訪れる
なんだか妙に気まずくて…別に言わなくてもよかったな、、なんて感じる

『やっぱり…大丈夫ですか？』

矢花は矢花らしい優しい声を投げかけてくれた
なんだかその声に安心してしまって涙が出てしまった

『…本当に地獄。…もうこんな地獄抜け出しちゃいたい』

雨と涙と共に私の本音がダラダラと流れていく
矢花は否定も肯定もせずうんうんとただ頷いてくれた

正直、なんで泣いているのかもわからない
母親の死のショックかと聞かれればそうではないと答えるのも違うが100%そうかと言う自信もない

『ごめん、矢花。もう無理。家に帰ってもいいかな…』

矢花は少し考えると

『いいっすよ』

と言った

…なんだかその軽さに心が救われる気がして、私はその場を離れた

親の葬式中抜けする娘なんて聞いたことないよ…
だけど…もう無理、、

私は慶にだけメッセージを送るとタクシーを呼んで家に帰った

慶は私のメッセージに対して、ただ一言分かったとだけ返信をよこした
…その分かったの一言に慶のどれほどの想いが詰まっていたかに私は気付かないふりをした

家に着くとなんだかどっと力が抜けて玄関先でへたってしまった
…いい年した大人が玄関先にへばりついて何やってんだろう

なんとなく沈黙が耐えられないから、とりあえずテレビをつける
…別に面白くないけど今はバラエティが丁度いい

なんも面白くないバラエティを冷蔵庫にあったチーズを食べながら薄ら笑いを浮かべてみる
…ネズミじゃないんだからさ、、なんて思うけどそんな事に構ってられる余裕はない

チーズに味がしない気がしたけど、お腹は空いていたのでどんどんと胃の中に固形物を入れ込む
…いつまでも満たされることのないまま私は食べる手を止められなかった