STORY24 デート(3) ページ26
何でも教えてあげる。
そう言って笑みを浮かべたAさんは、どこか意思を固めたような、少し悲しそうな。
そんな顔だった。
…悲しいことがあったんですかィ?
無理矢理聞き出したりしないから。
そんな顔、しないでくれ。
家ではいつも読書をしたりしているらしい。
たい焼きは頭から食べる派で、目玉焼きには塩コショウ派。
好きな色は紺色や深緑色、茶色とかの落ち着いた色らしい。
紅茶は実家でよく飲んでいた、と。
オシャレな趣味の家だな。
出身地は相州で、俺の出身地である武州の隣であることがわかった。
5年前…Aさんが18のときに江戸に上ってきたらしい。
※ 武州は武蔵国の別称で、今の東京都、埼玉県、神奈川県の一部。
※ 相州は相模国の別称で、今の神奈川県の大部分。
(Wikipediaより)
団子屋でいつも何してるのかとか、兄弟はどんなんなのかとか。
たくさん聞いた。
兄は本当に優しくて、弟はいわゆる姉っ子。
後ろをいつもくっついてくる可愛い弟だった。
母親はお淑やかで父親を立てるタイプ。
いつも優しく見守ってくれて、大好きだった。
家族を語るAさんは、優しい目をしていた。
「親父さんの方はご存命で?」
「…うん、元気にしてる…と、思う。」
Aさんは笑っているけれど、少し顔が歪んだのを見逃さなかった。
…話題を、間違えたかもしれねェ。
「そりゃ良かった。やっぱ元気が1番でさァ。それで…。」
話を逸らそうとしたら、Aさんは意を決したように、強く俺を見つめた。
「…総悟君、気を使わせてごめん。…話させてくれないかな。」
「そりゃ、いいですが…。いいんで?」
「…お返し。」
俺の最大の秘密、なんて言った自分に少しだけ後悔した。
気を、使わせただろうか。
「私の父は…いえ、まずは家のことから話すべきかしら。」
Aさんが話を始めようと、したとき。
ドカァァァァン!!!
けたたましい爆発音が響いた。
その轟音に、人々が思わず悲鳴をあげる。
咄嗟にAさんを見ると、驚いた様子だったが息を呑んだだけで、叫ぶことはなく冷静に周りを見ていた。
いや、見てる場合じゃねェ。
ここもいつ崩れるか。
状況判断より、まずはAさんの安全が1番だ。
すぐさま立ち上がり、Aさんの手を引く。
「こっちでさァ!」
…絶対に、守ってみせる。
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たいる(プロフ) - わかさん» こっちにもコメントくださってたんですね!笑ありがとうございます。笑っていただけて良かったです笑笑 (2021年7月11日 17時) (レス) id: 14bca84003 (このIDを非表示/違反報告)
わか - ミョウバンは笑った!!笑笑 (2021年7月7日 21時) (レス) id: 44294a6bf9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たいる | 作成日時:2021年1月8日 0時