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第二話 私と影浦さん ページ4

「改めて見ると本当に塩辛いのばっかり……ラボにお菓子置くの禁止にしようかな?」

昼夜研究に尽力してくれていてストレス発散が必要なのは分かるがこの量はダメだ。トリオン体はた

だでさえ吸収がいいのだから気を付けなければいけないのに。というわけで全部私が責任もって没収

だ。後で住み込み女子の女子会に持って行くのも罰の一つ、うん。

「えっと影浦さん影浦さん……いた!」

だだっ広いランク戦のブースに集まる中から影浦さんの後ろ姿を見つけ出す。髪型が特徴的なおかげ

ですぐに見つかった。階段を一気に駆け下りて彼に駆け寄っていく。背後十メートルまでに迫ったそ

の時だった。

「大石てめえまた来たのか!」

「あーバレた。」

振り向きざまに叫ぶ影浦さんを見て足が止まる。今日こそは気づかれずに行けるかとも思ったがやっ

ぱり無理か。いや、多分一生無理だ。影浦さんには感情受信体質があるから。

「なーんでバレちゃうかな?」

「知ってんだろお前! 俺のクソサイドエフェクトを! あとその撫でまわすみたいな感情やめろ! くすぐってえだろ!」

「いや、無理です。」

感情なんて自分の意志でどうこうできるものじゃないんだし。

「まあまあ面倒なサイドエフェクト持つ者同士、仲良くしましょうよ!」

「うっせえな!」

「カゲ!」

私より背の高い影浦さんに無理矢理肩を組んでたところに張りのある強い声が掛かる。その方向を振

り向けば緑と紺の隊服に身を包んだ誰かがこっちに向かって来ていた。

「やっぱりここにいたか。今日もランク戦、付き合ってくれ。それで……その子は?」

武士のような雰囲気を纏った彼は私の方に目を向けると首を傾げる。あんまりこっちには顔を出さな

いから知らない人がいても仕方ないか。

「大石華音です! オペレーター兼エンジニアやってます! 影浦さんの友達です。」

「カゲの友達か!」

「違うわ! こんな奴知らねえ!」

「そんなに全力で否定しないでくださいよ。傷つきますよ?」

私が無理くり絡んでるとはいえ全部否定は心外だ。友達とまではいかなくても顔見知りくらいにはス

テップアップできたと思ってたのに。

「だあ! 二人して俺に変な感情向けんな!」

「うわあ!」

影浦さんに振り払われてバランスを崩した身体が傾く。ランク戦ブースの床にそのまま倒れる身体。

衝撃に備えて反射的に瞼を閉じる。

「……って何も感じないんでした。」

忘れてた。この換装体では私は、何も感じない。

第三話 強化触覚→←第一話 ラボにて



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作成日時:2020年9月12日 13時

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