薄桜鬼　―　夜桜が散る　―

２・京の地にて ページ4

両親がいない私は親戚の家で過ごしていた。
　今は幕末。自分ちの子に食べさせるのがやっと。
　私はどこでも邪魔者扱い。
　京にいる親戚の家に行くため江戸から遥々やってきたものの
　初めて訪れるこの地で迷子になるのはあたりまえ。

　『たぶん、こっちかなぁ…』

　地図もないままふらりとやってきたのが間違いだった。
　でも、一刻も早くあの家から逃げ出したかった。
　京の親戚の家に行く。そういった時のあの人たちの顔。
　とても、嬉しそうだった。

　『あってるかな？』

　もうとっくに日が暮れている。
　酒屋の明かりがなきゃ、歩けない。
　かといって宿にとまる金もない。夜も歩こう。
　京の治安は悪い。夜に女が歩けば帰ってっこない。
　でも、休むわけにもいかない。とにかく歩こう。

浪１「おい、小僧。金出せ金」

　手首を掴まれ壁に押し付けられる。

　『っ…』

浪２「こいつ、顔が整ってるなぁ。女装させて売れば
　 １年は生活できるぜ？」

浪１「それはイイ」

　スキを見て逃げ出そうとするが、あっさり捕まった。

浪２「逃げられるとでも思ったのか？」

　刀を抜き、手に当てる。そしてその手をゆっくりと動かす。
　血が垂れる。

　『あっ…！』

　

３・彼の名は沖田総司→←作者　プロフィール

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