その能面、俺が剥がしたる【宮侑、宮治】

友達すたーと。 ページ17

お昼、めしを求めてノロノロと教室を出て彷徨いでると、今日も今日とて美味そうにめしを食うとる佐原の姿──────の前には、園芸委員で一緒やった佐原の友達が座っとった。

めし食いながら、目の前の友達と明るい笑顔を浮かべる佐原を無意識に眺めとると、バチッと目が合う。


「こんにちは」
「お」


軽く手を挙げると「宮くんだ」と佐原の友達が目を丸くした。確か名前は伊藤。大人しい方ではあるが、佐原と比べると顔が広く、愛想がいいかもしれん。


「今からお昼？」
「せや、腹空いてもうたからな」
「宮くん、一緒に食べへん？」


「「え」」思わず、佐原の呟きと被ってしもた。そないな様子を見ながら伊藤はニコニコ笑顔を浮かべとる。


「園芸委員のよしみで」


そんな突然の誘いに、佐原に目をやるとそそくさと隣の席からバッグを退散させる様子から「えぇんか」と都合よく理解する。

密かに俺は、豚のしょうが焼き食うのと同じくらい、佐原と話ができることにほんの少しの期待感を抱いとった。









話してくうちに、佐原の色んなことが分かった。歴史が好きやとか、動物が好きやとか、海外に興味があるとか、めしが好きやとか、めしが好きやとか。

自分から話すことは少ないけど、聞くと懇切丁寧に教えてくれた。ほんの少し戸惑いながら、でも楽しそうに自分の事を話してくれる佐原の話を聞いとるんは飽きんかった。

それに、めし食うても嬉しそうに笑うし、友達と話しとっても柔らかく笑う佐原の笑顔を見るとなんや安心した。



「Aがこんなにお喋りなの久しぶりやんなぁ」



食べ終えた食器を運ぼうと立ち上がる伊藤が零したその一言に、佐原は「！」と目を丸くする。

「楽しそうなAが見れて嬉しいわぁ」と笑うと、伊藤は食器片しに行ってしもた。


「…楽しい？」


恥ずかしげに俯いてしもた佐原に問いかけると、佐原は少し口篭った後「宮くんと話すの、楽しいよ」と控えめに微笑んだ。

なんやろう。佐原の笑顔は、テレビのアイドルみたいに特別可愛い訳でも、雑誌のモデルみたいに特別綺麗な訳でもないんやけど。

やけに、目に焼き付いて、心にじんわりと広がるあったかさがあるんや。


(俺も、"佐原が笑顔んなれるもん"の中に入っとるとえぇな)


「…俺も、楽しいわ」

友達として、これからよろしゅうな。そう付け足して照れくさくなって笑うと、佐原がブンブン頭を縦に振るから、さらに笑ってしもた。

ムスッ→←俺は、

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