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丁度、米屋と同じようにソファに腰掛けた時だった、そんな愉しげな声が聞こえたのは。
「それ、やんなくていいの」
何のことを指しているかすぐに分かった。
だから机に乗っている自分の手から、ぐしゃりとそれに答えるような音がした。
「別に…上に提出する期日はまだ先だ」
「でも早いに越したことはなくね?
たかが防衛シフト表の申請なんだし」
「…いや、いい」
今はそんな気分じゃない。
そう言いながら、たった今俺の手によって皺となった紙に続き、机に撒き散らされた紙をかき集めて適当に置いてあったファイルの中へ、これ又適当に押し込んだ。
「ま、いいけどさ。秀次がそれでいいなら」
俺にしても懸命な判断だと思うし。
「…は」
その言葉に思わず、放っておいたらずっと重たいままでいたであろう頭を上げた。
「え、何その反応」
「いや…」
急に動かした反動が来たのかもしれない、頭の中がぐらぐらと揺れ始める。
けれども、何処か。いつもよりかは。そんな普段と違う思い出せない違和感に、震え始めた口を手で隠すよう抑えた。
「…お前がそれを言うのか、と思って」
抑える場所を間違えたのかもしれない。
次はもっと知られたくない、見られたくない場所がじわじわと震え始めた。
「いーや、俺だからこそ言うんだろ」
だからかもしれない。
今目の前で映るこの男の姿が歪んで見える。
「だからもう何も考えるなよ、秀次」
それでも分かる。
どれだけ冷たい目で俺を見ようとも、俺の敢えて杜撰で通っていた手を知ろうとも、その声色じゃない。言葉一つだけで分かる。
「俺が何とかするから」
歪んだ先が俺の見たかったものであると。
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中村です。(プロフ) - ダニエルさん» わ~!いつも嬉しいお言葉ありがとうございます😭どうしても今年入ってから書ける時間と体力が少なくなってしまい、罪悪感増し増しで今回の更新に至ったのですが…嬉しいです🥂 𓈒𓂂𓏸これからも応援よろしくお願いします🤍 (2022年9月24日 1時) (レス) id: cfe5b5c1c8 (このIDを非表示/違反報告)
ダニエル(プロフ) - 何度もコメント失礼します🙇🏻♀️もう貴方様の書く小説が大好きです。今回の更新もお忙しい中ありがとうございます。中村さんが生きてるだけで乾杯です🥂どうかお身体にお気をつけて更新頑張ってください!応援してます🤍 (2022年9月20日 0時) (レス) id: 87c84fa022 (このIDを非表示/違反報告)
中村です。(プロフ) - 璃々さん» 初コメありがとうございます!なんとそんな…!😳寧ろここまで喜ばせてくれる素敵な言葉選びはどこから…とお聞きしたいぐらい嬉しいです~😭✨ありがとうございます…!今後もちまちま更新になるかと思いますが応援してくださると嬉しいです🕊 (2022年8月12日 23時) (レス) id: cfe5b5c1c8 (このIDを非表示/違反報告)
璃々(プロフ) - 初コメ失礼します。個人的にどろどろとした関係?恋愛?が好きなのでこの作品大好きです。原作からここまで凝ったのを作れる文才はどこからですか?ほんとに面白すぎます。しかもどんどん新しい情報が…続き楽しみに待ってます!頑張ってください🔥 (2022年8月12日 12時) (レス) @page35 id: e950c5fcca (このIDを非表示/違反報告)
中村です。(プロフ) - あずずさん» いえいえいえ!!!!!!!何度でもどんなことでもコメント頂けるのは本当に嬉しいですし、とても励みになります😭また宜しければ何時でもコメントしてください、というのはちょっと傲慢かもしれないですけど、今後も応援してくださると幸いです☺️ (2022年5月8日 19時) (レス) id: cfe5b5c1c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村です。 | 作成日時:2021年11月10日 14時