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弐拾 ページ21

晋助「今日は随分と沈んでるな。」


授業中だというのに高杉は私を見て言う。


A「今日は雨ですから。」


窓から見える薄暗い空。


ダルい。


晋助「雨ねぇ。」


同じ様に窓の外を眺めだす高杉。


A「雨は全部流してくれる。」


頬杖を付いて、独り言のように私は話す。


A「辛い気持ちもそれで流した涙も全部、雨は消す。」


辛くても覚えていたい。


泣いた涙も消されたくない。


まるで、死んだ彼の存在すら消されてしまう様で。


雨の日はいつも不安になる。


A「また誰かを失うんじゃないかって、怖くなる。」


授業も聞かずに高杉に胸の内を話していた。


一瞬、空がとても明るく光った。


先生の声を掻き消す音。


消える電気。


晋助「停電だな。」


突然の事に慌てる教師と生徒の中でも彼は落ち着いている。


A「あの日もそうだった。」


今日は何でこんなにも嫌な事ばかり続くのだろう。


雨。


最下位の占い。


雷。


停電。


A「これじゃあ、ミツルさんが死んだ時と同じ。」


私の長年のダンスパートナーだった5つ上の荻野望さん。


彼は私達と違うごく普通の言うなれば庶民。


彼は雨の日に交通事故にあって死んだ。


落雷による町一体の停電に、ヘッドライト切れの車。


望さんは誰にも、彼を轢いた運転手にさえ気付かれないまま。


この世を去った。


A「あの日、私が望さんの家に泊まりたいなんて言わなかったら。」


私が暗闇を怖がったりしなかったら。


望さんは死ななかったかもしれない。


A「まだ、側にいてくれたかもしれない。」


雨は嫌い。


悲しい記憶も辛い気持ちもそれで流した涙も、全て洗い流してしまう。


晋助「お前の中ではその望って奴が一番なんだな。」


だけど、雨は泣き声も泣き顔もこの音と暗さで誤魔化してくれる。


電気が復旧するのを待つ間。


私は左手に握られた写真を見つめて。


静かに泣いた。


高杉が私の右手に触れることも許して。


気が済むまで声を押し殺して泣いた。

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隣の眠井 - 密かに応援してました。とっても面白かったです。次章も頑張ってください! (2015年12月25日 14時) (レス) id: bd239fc3db (このIDを非表示/違反報告)
ぬえ - 続きが楽しみです! 頑張ってください!! (2015年12月6日 22時) (レス) id: 29ee31762a (このIDを非表示/違反報告)
こまり君(プロフ) - すごく面白いです!!更新楽しみにしています! (2015年11月29日 23時) (レス) id: d147eb461a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:高杉基 | 作成日時:2015年10月18日 3時

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