tokyo2pm36floor：2nd

9:58 a.m. ページ4

*





同期である黒崎から
私と川上くんが噂されていると教えられて
一週間が経った後、




あれから川上くん達はバイトに来ていない。




本業であるバンドの仕事が入ったらしく、
少しの間、来れないらしいんだけど


周りの人たちは川上くん達が姿を見せないことに
噂になったから来れないんじゃない？なんて、
私たちに対する好奇の眼差しは少しばかり強くなっていた。




・・・なんか川上くんがいないと静か。




そんな風に感じるなんて、
変なの。




実際は電話営業をしている部屋だから
常にどこかから誰かの話す声が聞こえてきていて、
だから静かなワケがないんだけど。




Aさん！Aさん！って
呼ぶ声がしない。




それだけで、
バイトに来てる子が
たまたま長く来ていないだけで、


少しだけ物足りない気がするなんて
おかしいのかな・・・？







.
.
.







「わー、ヤバい！始まるまであと2分しかないよ！」




背後からそんな声が聞こえて振り返った。




「あ、Aさんお久しぶりです！
仕事入って来れなかった！
今日からまたバリバリ契約取りますんで！」




廊下を歩いている私の隣を
川上くんたちがバタバタと走り抜けていった。




「また頑張ります！」




磯部くんがにこやかな笑顔を見せてそう言って、
白井くんは黙って親指を立てながら走っていった。




「ちょっと！廊下はっ、・・・」




走らないで！って言い掛けて、
学校の先生みたいだと思って口をつぐむ。




私の声に振り返った川上くんが
得意げな笑顔を見せながらテレアポ室に入って行ったかと思うと、
ピースサインをした腕だけをにゅっと見せて
扉の向こうに消えていった。




「わ、洋平っ。急に止まんなよ、危ない！」

「洋平、邪魔」

「邪魔ってなに！」




姿が見えなくなった3人の
楽しそうな会話が聞こえてきた。





*

+→←+

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す