【ジオウ】時計屋さんにて

17-2 ページ26

常盤Aという女性は不明な点が多い。
この本にも多くの記載はない。
おそらく特筆すべき点の無い、ただの人間だからということであろうが…。
先日、接触を持ったところはじめは警戒していたが、二度目の邂逅では私をからかい始めた。
私を犬扱いする始末。
我が魔王の想い人でなければ手を出していたところだ。
…でもまぁ、興味深い人物ではある。
さて、そんな彼女だが、現在ベロベロに酔っ払っていた。

「ウォズさんだあー！あーっはは！」

会社の飲み会だったらしい。
家まで会社の同僚とタクシーで帰ってきていた。
会社の同僚は男で、私を見た瞬間嫌そうな顔をした。
フン、送り狼でもするつもりだったか。

「ウォズさーん」

Aさんは私に腕を伸ばし何かを待っている。
…なるほど？
彼女に近寄り、背中とももの裏に手を回し抱き上げた。
彼女も私の首に腕を回し、体を密着させた。
いわゆるお姫様抱っこだ。
しかし、私は王子様などではなく。

「んー！ウォズさんいい子いい子〜」

犬、ですがね。
私の頭をぐしゃぐしゃとかき混ぜている。
彼女の同僚に一瞥を送りその場を後にした。
どうやら我が魔王はまだ起きて彼女を待っているようですから、あとは我が魔王に任せればいいでしょう。
…いや、この姿を見られたら見られたでめんどうなことになりそうな気が…。
ガラッと目の前の扉が開いた。
遅かったようですね。

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