【ジオウ】時計屋さんにて

15-1 ページ18

初めまして、と私の前に現れたのは長身の男だった。
アシンメトリーな黒髪。
緑色のコートぽい服。
手には本。
誰だお前。

「ウォズ、と申します」
「はぁ、どうも」
「………。名乗ってくれないのですか？」

彼はコテンと首を傾げた。
いやいや。いやいやいやいや。

「突然目の前に現れて、話しかけられて、なんの脈絡もなく名乗ってきた人は不審者の何者でもなく、そんな人に名乗る訳がないでしょう」
「それもそうですね、Aさん」

脱兎のごとく逃げ出した。
やばいやばいやばい。
名前知られている。
交番どこだっけ、とりあえずコンビニでも駆け込むか、と角を曲がった時、人とぶつかった。
倒れ込みそうになったときに、腕を掴まれて倒れるのは免れた。

「ぶつかってごめんなさい、ありがとうございま…」
「大丈夫ですよ。いきなり逃げ出すのは驚きましたが」

目の前に居たのはウォズ…さんだった。
えっ、待ってぶつかったのこの人？
どこをどう回ったらここに私より速く着けるの？
腕をガッシリ掴まれたままで離れない。
…怖い。

「この本によるともうすぐ我が魔王がここを通ります。Aさんは突然現れた私を警戒しているようですから、我が魔王に説明していただきましょう」

なに…？
魔王？
魔王がここを通るの？
混乱していると、Aさん！と名前を呼ばれた。

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