ブランクルーン - ﾌｪｲ･ﾙｰﾝ - (ページ14)

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❑絶望への扉ページ14

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「A……ｯ」

何度も、何度も言葉にする。
頬を伝う熱い雫は、名前を声にする度に溢れて、溢れて、やまない。

「覚えてる？僕が初めて会った時に君に聞いた事」
「……うん。思い出したよ、あの日シュウは聞いたね。“A・ウィルド”という子を知っている？って」

静かに頷いたシュウに、フェイは首を横に振って言葉を続けた。

「あの時の僕は、フェーダに居た時の記憶を封じていたから……知らないって答えたね」
「そう、でも全ては君に伝える為の名前だったんだよ」
「僕に？」

A・ウィルドという存在を探し求め、焦がれ、名前を失ったフェイへ届ける為の大切な名前。

それを託したのは消えてしまったあの子。

「最後の力を振り絞って僕に会いに来たあの子は、僕に覚えていて欲しいって笑ったんだ。君に、名前を届ける為」

いつの日か、フェイがシュウに辿り着く。
その事を信じて託して消えたインタラプトのA。

そのAは、フェイとSARUと未来を歩むことを信じたA。

シュウの記憶に浮かぶAは、フェイと天馬と共にこのゴットエデンに訪れた。
だからこそ、シュウへ託すことを選んだA。

けれど、目の前にいるフェイの知るAはまた違うパラレルワールドのAだろう。

共に歩む未来を諦めた世界の。

「もう一度、Aがいるインタラプトを探すよ。ありがとう、シュウ！」

キャラバンへ駆け出した背中を見つめたシュウは、誰にも聞こえない小さな声で呟いた。

「本当にこれでいいのかな……」

自分の目の前に現れたAは、未来への希望を託した。

今、無数に広がったパラレルワールドは、1つの線となるために
綻び、交わり、結び。1つの道になる。

そんな無数のインタラプトをフェイは超えていけるのだろうか。

真っ直ぐAの元へ。

ゆらりと揺らぐシュウは、空を見上げた。

「君はフェイとの未来を望んだようだけど、フェイが追いかける君は、フェイが苦しみから解放されることを望んだ」

その事実が指し示す未来は。
どこへと向かうのだろう。

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