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【4月20日 5:30 スディペイド病院フロア6 病室】 ページ6

――9粒。
私の手の平にある薬の数だった。
右から数えても左から数えても、
どんなに数え直しても、
その数が変わってくれることはもちろんなく、
ただ私の目の前にありつづける。

毎朝毎晩の恒例行事なのだからもう慣れなよー、
と言いたいかもしれないけど、
やはりお薬を飲むというのは何歳になっても辛いもの。

もう一回数えたら減ってるんじゃないかなー?
という淡い期待を抱えながら数え直す。
しかし、最終的には数え直しても数字が変わることなんてあるわけない、
と諦める。

ここまで含めて私の恒例行事だった。
やだー飲みたくない……。
聞いてください。
いつもの私ならすでに諦めて、
薬を飲むべく決意しているはずです。
しかし今日は違うのです。
だって――薬の量が増えている。

一つとして同じ形のない大小様々なお薬さんは、
どうやら今日は援軍をお呼びになったようだ。
哀れな私をせせら笑うように、手の平の上からこちらを見てくる。
もちろん妄想なんですけどね…。

ああ、ここ1ヶ月、思い返す限り、毎朝6粒だったのに。
なぜ!?しかもですよ!!
私が一番嫌いなカプセル型の薬(喉に詰まって飲みづらいのです)が増やされて、
9粒ってひどいです。
非道です。悪辣(あくらつ)です。
9粒ってそれはもう薬を飲むんじゃない、薬を食べるようなものです。
食べたくは…ないなぁ。
「……」
私は薬をテーブルの受け皿にほっぽり、少しだけ起こしているベッドに背もたれながら、
首だけ動かして窓の方に目をやった。

夏が終わり、徐々に秋が近づいてくるからかな。
窓からは優しい光が降り注ぐ。
白いカーテンの隙間から太陽光(たいようこう)が部屋を照らして、何とも言えない落ち着いた空間を演出している。

――白い。
そうとしか形容(けいよう)しようがない部屋に私は横たわっていた。
5m四方の四角い空間に白いカーテン、白い壁紙、白い棚に、白いベッドと白い服――白い空間。
何度寝て、何度目覚めても変わることのない――病室の風景が広がっている。







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設定タグ:ボカロ小説 , 書いてみた , 囚人と紙飛行機   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:安里 | 作成日時:2013年9月16日 11時

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