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「え？ 別に大丈夫だよ。この子の毒腺は口の中にあるから、ここのところをこうやって掴んであげれば口が届かないんだ。あ、でも慣れてない人がやるのはあまりおすすめしないかな。上手く掴もうとしてあわあわしてるうちに噛まれるよ」
「怒らせたら人も殺せちゃう魔法生物だっているんだから、気を付けてね。でもあたしは彼らになら殺されたっていいなあ、きっと幸せだろうなあ……。冗談だよ」
「見て、この虫。かわいいでしょ！ ほら、ここのところの色がすごくきれいじゃない？ そんな嫌な顔しないでよ。ほら、もっと近くで見て」
「別に、キミが楽しいならいいんじゃない？ あたしは別に止めたりしないよ。それで何か問題になったとして怒られるのはキミなんだから」
「気にしてないよ、ローレと比べられるのは慣れてるから。あたしがローレみたいに優秀じゃないのは事実だしね。それに、こうやって比べられるってことはローレが優秀だって思ってもらえてるんだよ？ 姉が褒められてると思うと、あたしも嬉しいよ」
「あたしは今を楽しく生きられればそれでいい、いつ死んだって構わないの！」
「死ぬ瞬間が人生で一番幸せな瞬間なんだって、聞いたことあるんだ。……あれ、勘違いさせちゃったかな。ううん、違うよ。別にあたしはすぐ死にたいわけじゃないんだ。ただ、幸せなら何にも怖くないなってちょっと思っただけ」
「でもあたしの知ってる誰かが死ぬのは嫌。だって、そんなの楽しくないでしょ。その人が楽しくても、あたしが楽しくなかったらなんの意味もないじゃない。死ぬならあたしの楽しみを妨げないように死んでちょうだい」
「一瞬の快楽さえあればいいんだって、キミ知ってる？ ヴェルザンディはそうあるべきだって、昔おババ様が言ってたの。名前に縛られたいわけじゃないけど、そのとおりに生きてみたらすっごく楽しかったんだ。だからあたしはヴェルザンディなの」
「知らないよ、ヴェルザンディが何かなんて。祖先の名前らしいけど、どんな人かも知らない。もしかしたら本当はいなかったのかも！ でも今更そんなこと、どうでもいいじゃない。今あたしは、デルミーラ・ノルニルはこうして楽しく生きているんだから」
「だって『今を最大限楽しみなさい』『それがヴェルザンディのあるべき姿だ』って言ったのはおババ様なんだから。なら、ヴェルザンディでいることより楽しいことを見つけたら、そっちを楽しむのもヴェルザンディとして正しい姿でしょ？」
「やーめた！」
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作者名：白銀刹那 | 作成日時：2022年8月4日 11時
