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098. ページ23
















「……っ」


遠くまで逃げてきた。

それなのに、後ろが怖くて振り向けない。
もしかしたら、あいつが追いかけて来ているかもしれないと思ってしまうからだ。


逃げてきた脚が痙攣を起こしたように震える。

自分が殺される恐怖より、



家に残してきたあの子たちが殺されるんじゃないか、という恐怖が胸にずしりとのし掛かる。


早く、家に帰らなきゃ。

皆の顔が見たい。無事でいるか、確認したい。


帰って皆をぎゅっと抱き締めたい。嫌がられても良いから。
それほど今は一肌が恋しかった。彼らが恋しかった。



そう思うと何だか寂しくなってきて、楽しかった時間を思い出す。

――もうあの日々は戻ってこない。


人は過去に生きるものじゃなくて、今と未来を生きるものだから。

過去は所詮過去だ。二度とその場所へ戻ることは出来ない。



もう振り向かないで歩いていこう。


未知なる明日のために。

皆であいつを倒すその日のために。



目が熱くなって、胸が苦しくなって、頬に涙が伝った。
それを拭って帰路へと急ぐ。

途中でショーウィンドーから映された自分の目が一瞬だけ茜色に見えた。


それはきっと、今の空の色がこの赤に近い紫が混じった群青色の所為だろう。















家に帰ると目を真っ赤に腫らし、泣きじゃくっているつぼみとこーちゃんがいた。
二人は僕を見るや否や体当たりする勢いで抱き着いてきた。


「…どうしたの、二人とも」


「あ、アヤノ、おね、ひっく、ちゃん、がっ…!!!」



キドが途切れ途切れに話し出す。

要約すると、「病院と学校から電話が来て、アヤノが飛び降り自殺をして亡くなった」ということだった。


「っ!?死んだ…?遺体が見つかった…?」



おかしい。アヤノは死んだわけではない。あちらの世界に行っただけ。

だから、遺体は見つからない。絶対に。



連絡か何かがくるとすれば、「アヤノが行方不明になった」ということだけだ。


……まさか、



僕はアヤノから聞いた目が冴える蛇の情報を思い出していた。




あいつなら、アヤノの死体をでっち上げることが可能だ。

財力も権力も持っている。あいつなら……

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作者名:桜音 | 作成日時:2014年2月24日 21時

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