泣いてもいいよと云ったって。 ページ17
思いもよらない言葉だった。
この子の両親は、さっきの爆発に巻き込まれたらしい。その時、お父さんが身を挺して守ってくれたのだと。
(ひどいよ、こんなのってないよ・・・!)
自分の浅はかさに腹が立った。こんなに小さい子が泣きもせずに気丈にふるまっているのに、私は、私は・・・!
「お姉ちゃん、ぶそうたんていしゃの人なの?」
「え、あ、はい。柳瀬Aって云います。」
「お腹すいた。」
そういや、さっきからお腹すいたといっていたな。
頭の隅でぼんやりと考えたAは、女の子の前におもむろに手を突き出した。
「見ててくださいね・・・はあっ!」
ぽんっ、と間の抜けた音とともに、手にアンパンがあらわれた。
流石の女の子もこれには目を丸くして、「すごい・・・」と呟いている。
「どうぞ、出来立てのアンパンです。」
「いただきます・・・!」
女の子は夢中でアンパンをほおばり、ぼそりと呟いた。
「今日ね、おかあさんの誕生日だったの。」
「うん・・・。」
「おとうさんがね、おいしいもの、食べに行こうって。」
アンパンを食べて、すこし気分が落ち着いたからかもしれない。女の子の大きな目から、一粒涙が落ちた。
「それからね、おっきい観覧車にも・・・」
そこで、Aは女の子をぎゅっと抱きしめた。涙が止まらなかった。嗚咽をもらすAに、女の子は背中をぽんぽんと叩いた。
「なんで、お姉ちゃんが泣くのよ。」
「ごめんなさい、ごめんなさい。貴女の方がずっとずーっと苦しいのに、悲しいのに。」
Aは泣きはらした目で女の子を見つめた。
「でも、こういう時は、泣いてもいいんですよ。無茶苦茶かもしれないけど、そうしなければ壊れてしまう。」
その一言が決定的だった。
女の子は顔をくしゃくしゃして、ポロリと涙をこぼした。
「わたし、幸子っていうの、お父さんが、つけて、くれたの。」
Aは幸子の背中をさすった。
それが、お母さんの手つきと妙に似ていて、幸子の涙は止まらなかった。
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メイデーア - 初コメ失礼します!この作品めっちゃおもろいですね。ちな、私は夢主ちゃん大好きなんで如月さんは嫌いサイドです。すんません。中也さんに何故如月さんを好きになったのかとか聞いてみたいです★ (4月6日 20時) (レス) @page34 id: 8fc649d94d (このIDを非表示/違反報告)
タピオカパン(プロフ) - うっす、タピオカパンです。この度なぜか作品ページに飛べなくなったので、別名義で再ログインしました。ご迷惑おかけして申し訳ありません (2020年8月6日 14時) (レス) id: cfe55cf157 (このIDを非表示/違反報告)
タピオカパン(プロフ) - Yukiさん» コメントありがとうございます!見てくれるだけでも励みになりますので、お気になさらず!・・・でも登録してくれるとうれぴーです! (2020年6月28日 11時) (レス) id: cfe55cf157 (このIDを非表示/違反報告)
Yuki - 面白いです!ログイン出来ないのでお気に入り登録できないんです(´;ω;`)更新待ってます!応援してます! (2020年6月28日 1時) (レス) id: f9f48108ec (このIDを非表示/違反報告)
タピオカパン(プロフ) - 鮎さん» ありがとうございます!たまに生存確認してやってください(-ω-)/ (2020年6月21日 15時) (レス) id: cfe55cf157 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:タピオカパン | 作成日時:2019年9月20日 15時