幸せになって

警察官のたまご17 ページ16

「それからは、親戚の家を転々としました。どこの家も家族の遺産が目的で、私はそのおまけ。それが嫌だった。だから、高校から一人暮らし」

思い出すかのように窓を見れば、空の上にあった陽も沈みかけてきた

「先輩、１つ約束して欲しいことあるんですけど」

今まで、口を閉ざしていた先輩が「なんだ」と返してきた

「私が奴らを捕まえたら…」

その後を紡ごうとしたが、うまい言葉が出てこない

忘れて？殺して？

一体、どうしたら良いんだろう

「やっぱりいいです」

結局、私は弱い
自分の達成したいことを人にお願いしようとしている、卑怯な奴

「なんだよ、言えよ」

「…またここに連れて来て欲しいです。それで、またみんなで乗り物乗ったり、美味しいもの食べたり、たくさん楽しい事したいです」

赤く染まり始めるテーマパークをじっと見つめれば、「別にいつでも連れて来てやるって」とくしゃりと撫でられ、「だから最後みたいな、言い方すんな」と不器用な優しさに思わず、笑ってしまう

そんな優しい先輩たちには、やっぱりお願いは出来ない

「あっ、もう下に着いちゃいましたね」

長話をしたからか、あっという間に下についてしまった

先輩が先に降り、「ん」と差し出された手につかまりゆっくりと降りた
なんだかくすぐったくて、再び深くフードを被った


「あー、腹減った」

観覧車から降りてきた研二先輩が、あからさまに大きい声で言うものだから、並んでいる人たちがクスクス笑っている
恥ずかしいと思って、松田先輩とスタスタと歩けば、一緒に乗っていた先輩たちも次々に着いてきた

「なんだよー！素直に言っただけじゃねーか」

みんなが笑っているこの空間が大好きだ

警察官のたまご18→←警察官のたまご16

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す