十九話 ページ19
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@まふまふ
僕はまふまふだけど、
まふまふじゃないんです。
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「…まふまふ」
この謎の呟きから、三日経つ。
まふまふが、意図的に三日も呟かなかったことは…なかったんじゃないか?
不安になってLIMEを何度も送ってみたが、既読すらつかない。
他の歌い手仲間に聞いても、皆「知らない」の一点張りだった。
「やっぱり、電話も出ない…」
数コール鳴らしても反応はない。
…何か、事件に巻き込まれている可能性もあるのか?
生存確認と、あの呟きの真意を聞こう。
そう思って、自分の部屋を出ると、まさに俺の部屋のインターホンを押そうとしていた天月がいた。
「そらるさん!」
「天月も、まふまふのことか?」
「はい…」
幸い、俺とまふまふは同じマンションに住んでいる。
天月とあの呟きについて話しながら、まふまふの部屋に向かった。
「…天月は、どういう意味だと思う?あれ」
「“まふまふ”でいるのが疲れた、ってことですかね…」
「やっぱりそう解釈するのが普通だよなぁ」
今も尚、いいねとRTの数が増え続けている最後の呟き。
リスナーの中には、毎日あの呟きにリプを送っている子もいるらしい。
愛されているんだな、と感じる反面、こういう監視のような目からも逃れたかったのかな…と思う。
相談はして欲しかったけど。
まぁどうせ、家に引きこもっているんだろう。
インターホンを押して、声を掛ける。
「おーい、まふまふー。出てこーい」
「まふくーん!ゲームしよーよー!」
「…出ないな」
「出ませんね…」
まさか…と嫌な予感がする。
カタン、と音がした方を向くと、マンションの管理人さんがいた。
「あら、相川さんの家に用事?」
「あ、はい!留守ですか?」
「彼ならね〜家をそのままにして、引っ越したわよ」
「「…え?」」
「確か…三日前に」と、管理人さんは指を折って数える。
引越し…?誰にも、何も相談せずに?
「…嘘だろ」
「ど、どうします…?」
「あの、引越し先を教えて貰えますか?」
「流石にそれは…個人情報だし。
友人が来るけど、誰にも言わないでって言われたから…」
「そう、ですか」
管理人さんにわざわざ釘を刺しているってことは、誰にも伝えていないんだろう。
…とりあえず、他の友人に連絡を取ろう。
胸騒ぎを感じながら、まふまふの部屋に背を向けて歩き出した。
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作者名:鈴里風夢 | 作成日時:2019年2月2日 17時