私も生きてたのに

弐 ページ2

吐息が漏れる。
はっ、はっ、もっともっと、と空気を求める私の姿は何てはしたないのだろうか。
男の人は驚いて私を抱えられなくなり雪の上に私を落とした。



「んっ、」


「な、にっを」



もう一度、交わした接吻。私は自分のしていることが分からなくなった。


そして、気がつくと血が溢れて、無くなっていたはずの左足が治っていることに気がついた。
また、全身の倦怠感が消え体が軽くなっていた。



「すっ、すみませ…！」



同時に、自分のしてしまった過ちに我に返る。

名前も知らない見ず知らずの人に何てことをしてしまったのだろうか。



「お前…鬼か。」



男の人は私の足を見て顔をしかめる。
怯えて、雪に頭を付けて謝罪する。


「(だが、この娘は自我がある。言葉も話せる。…鬼の、例外。)」


懐に挿している刀に手をかけようとした男の人。けれどすぐに刀から手を離し、私に手を差し出した。
そっと大きなその手を取った。



「落としてすまなかった。今晩は俺の屋敷に来い。」



また、抱えられる。
歩けます、と言うが聞こえない振りをされて数刻運ばれれば、大きな、濃紺の瓦が敷かれている屋敷に着いた。



「(……この娘は、接吻で回復する鬼。)」




私は、どうなってしまうのだろう。

参→←壱

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