私も生きてたのに

壱 ページ1

ほんの少し動かせば波状に響く、左足の痛み。

たった一夜の悪夢。世にも恐ろしい見た目をした、頭に角を生やした鬼が家を襲ってきたのだ。
そして、成す術もなく家族は体を掻き裂かれ血を流して死んでしまった。



「ぁあ…」


脳裏に嫌と言うほど残る、臓器やら骨やらが露出して血が溢れ出る様。恐ろしい。
けれど、病弱で薬漬けの血である私は一度左足を引き裂かれただけで済んだ。

「(薬を飲んでいなければ、死んでいたところだった。)」


病気にも、この襲撃されたことに対しても。
狭く苦しい生活の中、薬を買ってきてくれていた兄に感謝しかない。


そこまで考えたところで、今の状況を再確認する。

きっと、この山奥だから誰も助けに来ない。このまま餓死と壊死で、死んでしまうだろう。
意識があるまま死ぬだなんて苦しいな、と諦めることを選んで天を仰いだ。

とっ、と何者かの足音が聞こえた。




「…生存者が、居るとは。」



もしかして、またあの鬼かと思って私は死んだふりをしたが現れた人は迷いなく私の元へ近寄っている。
目を少し開けて見ると、知らない男の人。

人間だと分かり、助けを求めようとしたが手を伸ばすことも出来ない。
けれどその男の人は私の願いを汲み取って抱き上げてくれた。



「運んでやる、揺れるが我慢してくれ。」



私だけを運ぶ男の人。それを理解して、やっぱり家族の皆は死んでしまったのだと思い知らされた。

涙が出てきて、生きる気力も無くなっていく。
精神的な辛さが肉体にも伝わり、左足の損傷部の痛みが増していく気がした。



「っ…、泣くな。生きる気力を持て。」


「っ、うっ」



そう言われても、悲しさが心を埋め尽くして希望の光を陰る。

怪我の進みを最小限にするために運ぶ揺れを抑えてくれているとは言え、軟弱な私の体力は奪われていく。
涙が私の顎から離れた時、体の奥から何かが叫んだ。

疼く、酷い不快感と欲が溢れ出して居ても立ってもいられず、頭が可笑しくなり、理性が失われていく。
男の人の、詰襟の首を掴んだ。





「…っん…！？」


「っあ、」



唇を奪った。

弐→

• 金　運: ★☆☆☆☆
• 恋愛運: ★★★☆☆
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西 - この方角に福があるはずです

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