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川辺に座ると兄さんが異能力を発動させた
兄さんの異能力は私の異能力が唯一効かない特別なものだ、じくじくとした痛みが消えると同時に兄さんの手首に傷がついた
「……普通に手当てしてくれるだけでいいのに。私は兄さんに傷をつけたくてしているわけではないよ」
厭だったかと聞く兄さん、厭じゃない…むしろ嬉しい
それでも兄さんには綺麗なままでいて欲しかった
でも同時に私がつけた傷なんだという満足感もあった
この矛盾が、いつも苦しい
「…兄さん、傷痛むかい?」
『痛くないよ、大丈夫。もう治りかけてるからね』
そう言って私の腕に真新しい包帯を優しく丁寧につけてくれた
…これ、絶対外さないようにしなくては
『治、俺明日休みになって今日と明日は暇なんだ。何かしてほしいこととかある?』
暇、そう聞いて思わず兄さんの手を取る
「なら、私と心中してよ。兄さん」
そう云うときょとんとした後、綺麗に笑った
『…ふふっ、折角の休みなのに心中か。俺がいたらただの入水になっちゃうけどいいの?』
黙って腕を引くと兄さんは川のすぐそばに寄った
『却説、風邪ひかないと善いけど』
「その時はまた私が看病するよ、兄さん」
兄さんは身体が弱いから、私が看病するんだ
これだけは誰にも邪魔させない
どぽんっと水飛沫が舞った
・
暫くして
俺はぷかぷかと浮かびながら川を流れていた
浅くはないけどそこまで深くもない、浮くくらいは余裕だ
治は俺の腕の中で気絶してる
『ふむ、どうしたものか…』
ふと、岸辺を見ると銀髪の青年と目があった
『そこの少年、この人を引き上げてくれないかな』
「はっ、はい!!」
うん、元気でよろしい
治を抱えたまま岸へ向かって泳ぐ
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作者名:荊鈴音@月猫 | 作成日時:2021年5月18日 2時